根室空襲の真実語る ねむろ「九条の会」が講演会【根室】
【根室】憲法記念日の3日、ねむろ「九条の会」は講演会「さまよう東裕丸~根室空襲の知られざる真実~」を市総合文化会館で開いた。米軍機による攻撃で沈没した軍の徴用船「東裕丸」(1255㌧)乗船者の遺体処理について、これまで語られることのなかった「人間の尊厳」を欠いた処理が明らかになり、改めて平和の尊さを知らしめていた。
1945年7月14、15日の根室空襲は、道内で室蘭に次ぐ被害で、市街地の8割を焼失し、千島列島への物流拠点だった根室港周辺では徴用船など128隻が沈没したとされる。
「東裕丸」は14日に根室港で空爆を受け、温根沼沖まで避難するも翌15日、米軍の艦載機80機に一斉攻撃を受け沈没。全員死亡と伝えられる東裕丸の乗組員や軍属の遺体は、春国岱や別海町走古丹などに流れ着いたことが分かっている。
春国岱では荼(だ)毘(び)に付す木などの燃料が少なかったため、遺体の一部だけを焼き、腕や足が欠損した体はそのまま埋められたという。別の場所では内臓が残っていると焼けにくいため、役場の女性職員がホタテの貝殻で腹を割き、内臓を取り出して荼毘に付すなど、これまで明らかにされてこなかった事実が語られた。
参加者40人を前に講演を行った根室空襲研究会事務局長の近藤敬幸さん(93)は、温根沼に埋められていた10体の五体不満足遺体掘り起こし調査で、「亡骸に失礼だ」と手袋を外し、素手で触った頭蓋骨の冷たさを今も思い出すと述べた。遺体は東京の千鳥ケ淵戦没者墓苑に埋葬したそうで、「戦争は残酷な行為すら、せざるを得ない状況にする」と平和の尊さを訴えていた。
九条の会共同世話人の神忠志さん(81)は「戦争犠牲者の遺体をさらに傷つける。人間の尊厳を踏みにじらなければならないのが戦争。平和への決意を新たにしよう」と締めくくった。
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