網走の国井さん依然不明 北朝鮮人権問題侵害啓発週間 市内で失踪から半世紀余
政府認定の拉致被害者は17人
全国の警察と法務省は10日から16日の1週間を「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」を実施する。網走市内で拉致されたとみられる市民もおり、網走署などの関係機関は「拉致問題の認識を深めてほしい」と広く呼び掛けている。
啓発週間は法務省が呼び掛け、全国の自治体や警察などが連携して取り組んでいる。
2006年6月に施行された「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」の関連行事。拉致問題の解決など、北朝鮮当局による人権侵害問題への対処は、国際社会を挙げて取り組むべき課題と位置づけ「この問題についての関心と認識を深めていくことが大切」と国民の理解を求めている。
1日現在、政府が認定している拉致被害者は17人いる。
拉致の可能性を排除できない失踪者として、警察の調査対象となっているの人は全国で871人に上り、このうち道内関係者は85人が対象となっている。
失踪から55年、高校生の国井さん
網走市内で拉致被害に遭ったとみられている国井えり子さん(当時17)は網走女子高(旧網走高)へ通うまじめな女子高生だった。
その国井さんは1968年12月12日、「学校へ行く」と自宅を出た後に失踪。12日で失踪55年目となる。
特定失踪者調査会は、国井さんの失踪状況や北朝鮮関係者からの情報などに加え、脱北者がもたらした写真の人物が国井さんの可能性が高いとして2005年9月、拉致被害者として認定した。
国井さんは51年10月11日生まれ。元気でいれば今年72歳を迎えている。
父の力さんは、えり子さんの安否を心配しながら14年9月6日、心筋梗塞で他界。母の信子さんは、拉致被害者の認定を受けた当時「元気で戻ってきてほしい」との願いを語ったが、生き別れのまま、再会することなく他界した。
17歳で失踪したえり子さんは、網走高校(南6東3)に通う女子高生。自宅は市南6東6付近にあった。身長約150㌢の細身で、当時の網走高の関係者によると「まじめな優等生だった」という。
失踪時、同級生や教職員らが全校を挙げて国井さんを探したほか、警察や市役所なども捜索に参加するなど、全市的に行方を追ったが〝蒸発〟したかのように姿を消したという。
当時のクラスメートは「悩み事もあったようだが、突然姿を消してしまって、とても心配している」、仲が良かったと同級生の1人は「海が好きで、時間があれば友達数人で浜辺を散歩した」と振り返り、半世紀が経過した今でも安否を心配している。
同調査会はもう1人、国井さんと同時期に失踪した男子高校生も拉致されているとみて、水面下で調査を続けているほか、89年に網走周辺で行方不明になった埼玉県出身の矢島克己さん(同24)も拉致被害にあったとみている。
10日は世界人権デー、同16日は国連総会で北朝鮮の人権状況を避難する採択がされた日。全国的に同様の運動が行われている。
拉致問題に関する情報は拉致問題対策本部や警察庁のホームページに掲載されている。
制服のまま、眼鏡は部屋に
特定失踪者調査会によると、国井さんは失踪する数日前から、両親に「学校へ行く」と告げ、一旦は自宅を出た後、両親が仕事に行くのを確認した後に戻り、自分の部屋に閉じこもっていたという。
失踪した日の午前7時半ごろ「学校で試験があるのでいつもより早く学校へ行く」と言って、朝ごはんにミカンを半分だけ食べ、自宅を出たまま行方不明となった。
失踪時の服装は高校の制服。普段使用していた眼鏡は部屋に置かれたままで、日記も2冊残されていた。
衣服などを持ち出した形跡はなかったが、アルバムがなくなっていた。
高校生だったことから多額の現金は持っていないと想定されている。家の現金にも手をつけた形跡はない。
失踪後、数日してから無言電話が3―4回かかってきた。家族が出ると一方的に切れるものだった。同様の無言電話が複数の親戚方にもあったという。
脱北者がもたらした写真が「国井えり子さんである可能性がある」として、05年9月30日、道警に告発状を提出している。
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