中札内村のコーヒー専門店・ハレノヒ珈琲(東2北7、市原香織代表)は7月、世界基準の厳しい審査を経て与えられる最高峰の豆のみで抽出した「トップスペシャルティコーヒー」の専門店としてリニューアルした。市原代表は焙煎(ばいせん)にこだわる中で、「ただのカフェではなく、コーヒー好きを満足させる専門店になろう」と決断した。「トップ-」は厳選されたコーヒー豆のため安定した仕入れが難しく、専門店は道内でも珍しいという。
取り扱うのは「トップスペシャルティコーヒー」と「トップオブトップ」の上位二つのランクのコーヒー豆。二つ合わせても上位1%程度という高品質の豆を使ったコーヒーを提供する。
リニューアルの背景には、焙煎へのこだわりがあった。市原さんは「コーヒーの業界で焙煎は企業秘密のようなもの。学べる機会は少なく、自分のカップ(コーヒー)に満足できない日があった」と話す。昨年11月、三重県のコーヒー店で開かれた焙煎の勉強会に参加。会の終了後も、講師を務めた「ブラジルコーヒー鑑定士」に、焙煎した豆を毎週送り、指導を仰いだ。
市原さんの熱意に押され、講師の鑑定士が2023年の暮れ、指導のため来店。焙煎には味を舌で分析することが欠かせないとして、塩水などを舌に載せて、「カッピング」の技術を学んだ。
正しくカッピングすることで、「なぜ思った味にならないのか」を見極め、焙煎を調整することができる。ただ、習得は難しく「悩んでしまった」。今年の2月は、営業を豆の販売とテークアウトに限定し、カフェなどの営業を休止してまで、コーヒーの味を追い求めた。
その中で、さらにコーヒー好きに応える店にしようと、「トップ-」の専門店にリニューアルすることを決めた。コーヒー1杯は850~1000円台程度とやや高めだが、「トップ-」としては安価。リニューアル以降、十勝管内外から多くの愛好家が訪れている。
市原さんは「水が良い中札内は、コーヒーの味を追求できる場所。空港からも近いので、全国の愛好家を納得させるカップを目指して勉強を続ける」と決意を新たにしている。
<トップスペシャルティコーヒー>
アメリカのNPO法人アライアンス・フォー・コーヒー・エクセレンス(AEC)が運営するコンテスト「カップ・オブ・エクセレンス」の審査で86点以上を獲得したコーヒー。世界最高峰のコーヒーと称される。甘さやバランス、酸味の質など各8点満点の8項目と、基礎点の36点で評価する。
市原さん焙煎全国大会へ 「レベルアップしたい」
市原さんは東京で行われるコーヒー豆焙煎の全国大会「トーハ・ド・ジャポン・ロード・トゥ・ブラジル 2024/2025」(9月26、27日)に出場する。昨年から訓練を重ねた焙煎の技術を全国大会の舞台で試す。
大会は、コーヒー店を運営するか勤めるなどして、プロとして焙煎に携わる人だけが参加できる。書類選考を通過した50人が5ブロックに分かれて予選を行い、各ブロックの上位2人ずつが本戦の全国大会へ駒を進めた。
予選は出場者に課題のコーヒー豆が送付され、適切に焙煎して提出するもの。「フレーバー」や「バランス」など主に5項目で審査され、「未熟豆」や「カビ豆」を取り除く手腕も問われる。
市原さんは、見た目から未熟豆や緑色のカビ豆を適切に除去。焙煎方法は数通りを試し、「酸味が舌に残りやすい豆」との判断から酸味を抑える焙煎で提出し、高い評価を得た。
全国大会では、出場者が会場で同じ焙煎機を使って豆を焙煎し、優勝を競う。上位2人は25年にブラジルで行われる世界大会へ出場できるほか、豆の生産から焙煎、抽出まで精通したコーヒーの資格の最高峰「ブラジルコーヒー鑑定士」につながる学習の機会を副賞で得られる。
市原さんは「他の全国出場者は業界で名の知れた人ばかり。ベストを尽くして、少しでもレベルアップして帰ってきたい」と意気込んでいる。
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