元クレインズ上野さん、武修館高生の下宿開業【釧路町】
【釧路町】アイスホッケーのアジアリーグで13年間プレーし、日本代表としても活躍した上野拓紀さん(37)がこの春、北都1で武修館高校アイスホッケー部の生徒を受け入れる下宿を開業した。屋号は「トップ・フィールド」。氷都釧路に憧れて武修館高の門をたたいた選手たちを、陰になり日向になり支える。
上野さんは長野県出身。釧路緑ケ岡高校(現武修館高)を経て、早稲田大学に進学。2009年にハイワン(韓国)でアジアリーガーとしてデビューした後、栃木日光アイスバックス、日本製紙クレインズ、ひがし北海道クレインズで、得点力に秀でたFWとして奮闘、中軸を担った。クレインズ時代は日本製紙最後、ひがし北海道最初の主将として3シーズンにわたり、リンク内外でチームを鼓舞、ファンに慕われた。
22年4月にひがし北海道退団後、釧路トヨタ自動車で働きながら、社会人リーグ強豪の釧路厚生社IHCでプレーするなど、地域に根差した活動を続けてきた。日々アイスホッケー関係者と交流する中で、遠方から武修館高に入学し、アイスホッケー部で腕を磨く生徒たちが、勉強とスポーツ以外の生活面で苦労している現状を耳にした。「20年以上前、自分自身も『本場釧路でアイスホッケーをやりたい』という思いで、故郷を飛び出した。後輩たちのために、競技に集中できる環境を整えてあげたい」と一念発起し、22年11月から下宿開業の準備を始めた。せっかく就職した地元企業に退社を告げた際には「驚かれたが、アイスホッケーと関わり続けたいという思いを酌んでいただいた。かえって励まされた」。
下宿「トップ・フィールド」は既存の下宿を、武修館高アイスホッケー部に特化し、スポーツ施設を意識した建物に改装した。ミーティングも開ける食堂、エアロバイクのあるトレーニングルーム、使い勝手の良いシャワー室も作った。
すでに、釧路以外から入学した1~3年生の10人が入室し、競技に打ち込んでいる。「学校の送迎バスも止まってくれる。周囲の応援もあり、生徒たちはのびのびと過ごせているのではないか」と手応えを感じてる。
今年度から、母校である武修館高アイスホッケー部のコーチにも就く上野さん。「指導は優しく」と笑いながらも、トップリーガーとしての経験を伝えていく思いは強い。「下宿生から、アジアリーガーや日本代表が出てくれればうれしいが、それ以上に、3年間の下宿生活で、いつ社会に出ても恥ずかしくない若者になってほしい。成長を見続けられるのは楽しみ」と話している。