完成したイオル文化文化交流センター

【平取】町がアイヌ文化の伝承者育成事業の拠点として建設を進めていた「イオル文化交流センター」の新築を祝う「チセノミ」が11月28日、約60人が出席して同センター交流室で行われた。

　町はアイヌ文化の振興を重点に掲げ、平取地域イオル再生事業を拡充しながら継続的に実施するとともに、国の制度を最大限に活用し、二風谷アイヌ博物館から沙流川沿いに北上した河川敷地に同センターを整備した。

　町内の小林組が請負い昨年夏から建設工事が始まり、今年２月に建物が完成。34台の駐車場整備、環境整備を行い11月21日に引き渡された。

　木造平屋建て、延べ床面積約５６０平方㍍。総事業費は建物２億７千万円、外構整備６千万円で計３億３千万円。内部は、修学旅行生の舞踊体験やイオル再生事業（体験交流事業）に活用する「交流室」、伝承者育成事業の研修拠点となる「研修室」、民具製作やカヤ小束づくり、育苗スペースを備えた「作業スペース」、「会議室」、「事務室」（平取町アイヌ文化振興公社）など。

　遠藤桂一町長は、同センター整備事業の概要を紹介し、「アイヌ文化の伝承のための伝統的舞踊、伝承者育成事業の研修の拠点、沙流川流域の素材を活用したモニタリングのための栽培などの核となる施設、人材育成の交流の場として、国のアイヌ政策交付金を活用し２カ年事業で整備した。町の目指すアイヌ文化振興のための人材育成、人材確保、情報発信、交流などがさらに活発になされることを願っている」とあいさつ。

　来賓の千葉良則町議会議長は「沙流川流域河川のエリアをさらに拡大した事業を行い、二風谷コタン整備やアイヌ文化伝承に必要な材料となる自然素材の育成や調査を今後も拡大していくためにとても重要な施設となる。また、伝承者育成事業の活動拠点としても担い手育成に必要なアイヌの学習や研修、技能を習得する場としても今後は中心的な役割を果たして行くものと確信している。既存の博物館や歴史館などの施設と合わせて町のアイヌ文化発信をさらに前進させてほしい」と期待した。

　この日の祭司は、平取アイヌ協会の木村英彦会長、副祭司は町アイヌ文化振興公社主任の川奈野利也さん。

　チセノミは、チセチョッチャ（家の落成のお祝い）、カムイノミ（始めを告げ神々への祈りの儀式）、ハルランナ（食べ物が降ってくる）、シンヌラッパ（先祖供養）、古式舞踊、イナウエタイエ（終わりを告げる儀式）の流れで行われ、最後に木村会長が「チセノミを滞りなく済ませることが出来た。アイヌ文化振興公社が中心になり、地域の若者の力によって進められたことに感激している。これから交流の場、担い手育成などさまざまな活用をしていきたい」と感謝の言葉を述べた。

　式の冒頭、センターの地神祭で祭司を務め、アイヌ文化の指導、工芸でも高く評価される貝澤貢男さん（83）が11月23日に逝去したため、１分間の黙祷を行った。

完成した施設でカムイノミを行う関係者たち