標茶最古「龍吐水」復元 消防署でお披露目【標茶】
【標茶】明治時代に町内で使われ、町博物館ニタイ・トが所蔵し、このほど修復が完了した消火器具「龍(りゅう)吐(ど)水(すい)」と、標茶消防団(田中純一団長)第2分団久著呂消防部に更新配備された小型動力ポンプ付積載車が12日、標茶消防署でお披露目された。龍吐水の復元は全国的にも珍しい事例で、標茶の最古と最新の消防ポンプが見られる貴重な機会となり、町や消防関係者の注目を集めた。
今回配備された積載車の艤(ぎ)装(そう)と龍吐水の修復は、いずれも札幌市の消防車メーカー「二二商会」(斎藤太雅哉社長)が手掛けた。1901年に同社を創業した4人の中に、町内にあった釧路集治監の初代典獄(刑務所長)や川上郡長、同郡警察署長などを務めた大(おお)井(いの)上(うえ)輝(てる)前(ちか)氏がおり、標茶と縁がある企業だ。
龍吐水は、腕木をシーソーのように動かしてポンプを駆動させ、木製の水槽に入れた水をノズルから打ち出す仕組みで、江戸から明治にかけて日本各地で使われた。今回修復した龍吐水は、1888年に青森県弘前市の商店から購入し、99年まで義勇消防隊(後の標茶消防団)が所有していたもので老朽化がひどく、長らく収蔵庫で眠っていた。
標茶とのつながりを知った斎藤社長が昨年6月に来町し、町博物館で龍吐水の話を聞いて無償修理を申し出た。修復は2023年11月から今年にかけて実施。既存の部品を生かしながら、直せない部分は作り直し、当時の輝きを取り戻した。腕木は全長約3㍍で、水槽は約250㍑。
積載車は、1993年に配置した車両を置き換え、12月1日から運用を始める予定。全長4・89㍍、全幅1・695㍍、全高2・52㍍で、4輪駆動のオートマチック車。毎分1200㍑以上の放水が可能なB―2級小型動力ポンプを積載しており、電動油圧式の昇降装置で上げ下ろしできる。
このほか、ホースやアルミ製2連はしご、標茶消防団では初のガンタイプノズルなどを積んでいる。価格は1848万円。
この日は、積載車の納車式と龍吐水の受領式を実施。佐藤吉彦町長は「歴史的に価値の高い資料。ご厚意に深く感謝する」とあいさつし、田中団長、斎藤社長と共に放水を披露した。
斎藤社長は「構造が分からず、材料もない中でのスタートだったが、放水できるまでに復元できた。子供たちに操作してもらい、消防に興味を持ったり、町の歴史を知るきっかけになれば」と話していた。龍吐水は町博物館で保管する予定だ。
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