平方さんが見つめてきたものを表現した作品が並ぶ会場

　日本板画院委員で函館在住の木版画家、平方亮三さん（８３）の木版画展が３１日から１１月５日まで、いしい画廊（本町３１）で開かれる。同院出展作のほか、木版画を探求する小品の計２７点が並ぶ。

　平方さんは１９４１年長崎市生まれ。４歳の時に被爆した。６２年から棟方志功に深く引かれ版画を始め、原爆の記録を後世に残す作品などを独創性あふれる彫りと繊細な刷りで制作。今回は「戦後の体験を表現した」と自らの心象風景を発表する。

　小品の色彩は、視覚的な刺激は少ないものの強い生命感のある緑色を中心に、情熱の一方で警戒を示す赤色、希望を膨らませるが危機感も抱く黄色などで構成。その中に焼いた板目や墨を付けたたこ糸を使用した線が交わる。「凝ったことはしない」と話しながらも、刷りの奥深さで同じような色合いでも異なる印象を与えている。

　ほとんどが新作で、精力的な活動を示している。「まだ木版画の可能性についてチャレンジする」と話し、来場を呼び掛ける。