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十勝毎日新聞

ブラジルの姉妹 ルーツたどり町へ 上居辺小卒業写真に父の姿【士幌】

 日系ブラジル人でサンパウロの郊外に暮らす古川悦子・テレーザさん(73)、堀江・古川・タマキ・マチルダさん(68)姉妹が8月、父古川正さん(享年98)の故郷士幌町を訪れた。正さんが育った地を探すため、士幌町の土屋仁志教育長が調査に協力。古川家が入植した場所を特定し、2人を案内した。姉妹は「まさかここに来られるとは夢にも思わなかった」と話し、亡き父に思いをはせた。

正さんが育った家があった場所に初めて訪れた(右から)悦子さんとタマキさん

土屋教育長が調査に協力

 正さんは1918年生まれ。姉妹によると、15歳で士幌から一家でブラジルに渡り、農業を始めた。結婚し、子どもたちが生まれてからも経済的な余裕はなく、異国の地で必死に働く父の姿を姉妹は記憶する。2016年に正さんはブラジルの地で大往生を遂げた。2人はそんな父の故郷に思いを寄せるようになり、「父の生まれ育った北海道を一度は訪れたい」と来日を決めたという。

 2人は今回、芽室町で開かれた「第37回発祥の地杯全国ゲートボール大会」(8月31日、9月1日)に出場するブラジルゲートボール(GB)連合の訪問団と共に来日した。父が幼少期を暮らした士幌の家を訪れようと、ブラジルGB連合顧問の鈴木雅夫さん(73)に相談。芽室町の江崎健一生涯学習課長を通じて、土屋教育長に協力を仰いだ。

 土屋教育長は姉妹から提供された正さんの戸籍の証明書に残る住所から、家があったのは上居辺小学区だと分かった。そこで同校の70周年記念誌(1986年発刊)を調べると、古川一家が22(大正11)年に士幌東に移住してきた記録を発見。さらに、北上居辺地域で保管する地図にも同様の内容が残っており、古川家があった場所には33(昭和8)年から別の一家が住んだ記録もあったことから、正さんが「15歳でブラジルに渡った」とする姉妹の証言とも時期が一致した。

 8月30日に土屋教育長、江崎課長、鈴木さん同行の下、姉妹は古川家があった場所を訪れた。現在、その場所にはスイートコーン畑が広がっていた。周辺の農家もすでに入植した世代の孫、ひ孫の代となっており「当時の古川家について知る人は見つからなかった」(土屋教育長)という。それでも2人は、正さんが育った家があったという畑をしばらく感慨深げに眺めていた。

 土屋教育長は正さんの当時を知る資料をもう一つ用意していた。正さんが上居辺小学校を卒業した時の写真だ。同校では歴代の卒業生の写真を廊下に氏名と共に残しており、正さんも第13期卒業生として名前と写真が残っていた。

昭和5(1930)年の上居辺小卒業写真。後列左から2人目が正さんという

 土屋教育長が印刷した白黒の卒業写真を姉妹に手渡すと、2人はすぐに後列左から2人目の児童を指さし「これだね」と笑い合った。悦子さんは「26歳で亡くなった弟(正さんの息子)にそっくりだからすぐ分かった」と写真を見つめた。

 その後、上居辺小にも訪れ、正さんのきょうだいと思われる名前も発見した。悦子さんは「父はブラジルに移住してから、一度も古里に戻らずに頑張ってきた」と正さんをたたえ、日本語があまり得意でないタマキさんも、姉の言葉の意味を理解し、笑顔でうなずいた。

 調査に協力した土屋教育長は「士幌から南米へ移住した人がいるとは聞いていたが、子孫の方々が訪れてくれたのは初めて。わざわざ足を運んでもらいありがたい」と話し、地球の裏側との縁に感謝した。

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