代表作並べ全容紹介 「藤戸竹喜の世界展」開幕 国立アイヌ民族博物館 白老
白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)の中核施設・国立アイヌ民族博物館(佐々木史郎館長)で29日、第8回特別展「生誕90年記念 藤戸竹喜の世界展」が開幕した。北海道を代表する木彫家の1人、藤戸竹喜氏(1934~2018年)の代表作91点を並べ、初期から晩年に至るまでの全容を紹介する。8月25日まで。
藤戸氏はオホーツク管内美幌町出身。熊彫りの名工の父竹夫氏に12歳から学び、15歳の時には職人として店頭で彫り始めたという。30歳で阿寒湖畔(現釧路市阿寒町)に民芸品店「熊の家」とアトリエを構えて独立。先住民族の伝統技術を受け継ぎ、クマやオオカミ、キツネ、シャチ、ラッコ、エビ、カニなどの生き物から先人の威厳あふれる肖像彫刻まで作域を広げ、独自の作風を確立した。2015年に北海道文化賞受賞、16年に文化庁の地域文化功労者表彰を受けた。
作品は藤戸氏の人生を追いながら、六つのテーマで並べられている。JR札幌駅西コンコースに設置された晩年の作「エカシ像 ク・リムセ(弓の舞)」(2014年)や35歳の時に制作した「樹霊観音像」(1969年)など生命への敬意と深い愛情を思わせる躍動的な表現は、国内外から高く評価されている。
同館は開幕前日の28日、報道陣に会場を公開。佐々木館長(66)は彫像を通じて「藤戸さんの技と心に接してほしい」とあいさつ。来賓で妻の茂子さん(75)は「北の大自然を舞台に、生き生きと闊歩(かっぽ)した命の物語を伝えている。展示が全ての命の鎮魂の一助となれば」と述べた。
展示を企画・監修したフリーのキュレーター五十嵐聡美さん(60)は「藤戸氏はアイヌとしての誇りに生きた作家。文化復興拠点ウポポイでの企画展は、彼の作品と人生を多くの人に知ってもらえる大切な機会になる」と語った。
開館時間は、7月19日まで午前9時~午後6時、7月20日~8月25日は午前9時~午後8時。月曜休館(月曜が祝日または休日の場合は翌日以降の平日)だが、7月8、9、15日、8月12、13日は開館。観覧料は大人300円、高校生200円、中学生以下無料。ほかにウポポイの入場料が必要となる。
詳細はウポポイのホームページ(https://ainu-upopoy.jp/)。
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