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函館新聞

「国宝・天守」焼失から75年 松前城【松前】

桜花に包まれる松前城「復興天守」(4月)

 【松前】1949年に起きた松前城(福山城)の三層天守などを焼失した火災から5日で丸75年を迎える。跡地では60年に鉄筋コンクリート造の「復興天守」が再建され、61年から松前城資料館として活用。木造復元の構想は具体化に至っていないが、最北の城下町に欠かせないランドマークとして町民や観光客に親しまれている。

 焼失前の天守は幕末の1854(安政元)年に完成し、1941年に旧国宝保存法(50年廃止)で本丸御門(現存、重要文化財)などと「国宝」に指定された。49年の火災は6月5日午前1時10分ごろに町役場で起きた火災が同1時45分ごろに飛び火し、天守などを焼き尽くすまで明け方近くまで燃え続けた。

 当時の地元紙「函館新聞」(同6日付、本紙とは無関係)は「国宝松前城焼失す 天守閣三層楼に飛火 追手門残して全焼」との見出しで炎上する城の写真付きで報じた。別面の記事は「今はなし北海の古城 薄明にむせぶ松前町民」として「町民は、自分の家は焼いても松前のシンボルだけは助けようと口々に悲痛な叫びをあげ…」と伝え、町民の懸命な消火活動は本丸御門や旧本丸表御殿を活用していた移転前の松城小への類焼を防いだ。

 火災があった日は、戦時中に施した空襲対策などで損傷した建物を修復するために足場を組むことが予定されていた。出火元の役場も松前藩家老松前右京邸を1870(明治3)年に移築したもので、松前奉行所跡としての史跡指定が解除となった。

 復興天守は焼失の反省から鉄筋コンクリート造での再建が選択され、建築史家の大岡実氏(1900~87年)が手掛けた代表的な復元建築物の一つとなった。ただ現行の建築基準には合わないため、直ちに危険な状況ではないものの、震度5以上の地震で倒壊の恐れがあるとされている。石山英雄前町長が木造天守整備の方針を示した経過があるが、新型コロナ禍を挟んだこともあって具体化していない。

 木造復元には課題もあり、町教委の佐藤雄生学芸員は「木造復元する場合、細部に根拠が求められる」とし、外観は古写真や立面図を元に知ることができるが、基礎構造など判然としていない部分の整理が必要になるという。36億円とした概算事業費も近年の物価高騰を踏まえればさらに膨れ上がる可能性が高い。2021年度から松前城跡では石垣の測量調査を継続中で、石垣の保存整備を検討する基礎資料となる。

 「国宝・松前城」の火災と同じ49年の1月には奈良県で法隆寺金堂の壁画を焼く火災があった。戦後の文化財保護を考える重大なトピックとして語られ、大岡氏が不燃建築を推進する契機になったと言われる。復興天守は町村金五道知事(当時)を総裁に松前城再建期成会をつくり、多くの町民や松前出身者、道内各地の子どもたちからの善意が原動力となった。天守がたどった歴史自体も後世に語り継ぐべき側面が多い。

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