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十勝毎日新聞

名産「亜麻」をドレッシングに 町内の生産者有志ら本格栽培へ【本別】

 かつて盛んだった亜麻を復活させて、本別の“新規”作物に-。新たなブランドとして、町内の生産者有志が本格栽培に乗り出す。3年前から試験的に進めてきた勇足地区の富川範己さん(70)は、子どものころに祖父が畑で育てていた記憶があり、「多くの農家が生産していて、町内には亜麻工場があった。廃れてしまったが注目を取り戻しつつあり、本別の新たな光になれば」と話す。今後は亜麻仁油の独自商品を開発するほか、亜麻の茎から取れる繊維をタオルなどに加工する「本別リネン」事業にも取り組む考えだ。

亜麻仁油入りのドレッシングを手にする生産者の富川さん(左端)。右端はJA本別町の佐野組合長

 亜麻は明治から昭和初期にかけて道内で広く栽培された。十勝にも多くの加工場が稼働。本別も亜麻を活用した繊維事業の一大産地だった。

 本別の開拓八翁と呼ばれ、JA本別町の前身となる本別産業組合初代組合長の井出英作氏(1865~1944年)の日記によると、1913(大正2)年に町内で亜麻栽培が始まったとされている。本別町史には66年に最後の耕作が行われ、18年から68年まで亜麻工場が稼働していたと記されている。

ノウハウなく不純物に苦慮

 2018年に同JAの若手職員を中心に亜麻を町おこしの一つにと取り組み始め、第一線を退いていた富川さんが畑を借りて20年に栽培を始めた。「亜麻は収穫時期が夏で、二毛作にも適している。現在の十勝での栽培も少ないので面白い」と話す。

 ただ、ノウハウが継がれていなかったため試行錯誤した。雑草の除去などに苦戦し、不純物も混じった。生産量は少なく、昨年絞った亜麻仁油は約9リットル。通常は商品化できる量ではないが、何とか活用したいと帯広物産協会が事務局を務める北海道フードネットワークプロジェクトに相談。道産タマネギと混ぜたドレッシングとして限定約700本の試験販売を行った。

 栽培管理の経験を積み、今年は7反(約70アール)で作付けし、約半分が成功。昨年よりも5倍以上の油を絞れた。富川さんは「今後は良質な油を取り、畑の面積も広げたい。いずれは有機の方向も」としつつ、多くの農家への広がりに期待する。「古いものが、また違った良い面を評価されて戻ってくるのは興味深い。薄青紫色の花もきれいで良い景観にもなる」と笑う。

 今年度中に生産、加工から販売までの6次化を目指す法人「本別チャレンジ(仮称)」を立ち上げる予定。JA本別町の佐野政利組合長は「緻密に亜麻の復活を図ってくれている。地域の新たな作物として育つように応援していきたい」と話している。

ドレッシング15日から販売

 15日には亜麻仁油入りのドレッシング「十勝農家の和風たまねぎドレッシング」の販売を始める。とかち物産センター(JR帯広駅エスタ東館2階)や音更町のハピオ、Aコープほんべつ店などで販売する。1本(300ミリリットル)860円の予定。

<亜麻>
 化学繊維の登場と共に姿を消したが、近年は亜麻の機能性や多様性が注目されている。茎の繊維は最高品質の素材として一流ホテルのシーツやタオルなどに活用。種子から取れる亜麻仁油は動脈硬化や心筋梗塞、生活習慣病などの予防効果があるとされるαリノレン酸が多く含まれている。

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