北の海を守り38年間 巡視船ゆうばりが解役
【網走】オホーツク海の平和に貢献してきた海上保安庁の中型巡視船「ゆうばり」が12月4日、解役となる。網走港で行われた見送り式は漁業者や港湾関係者らが集い、38年間の役目を終えたゆうばりに手を振ると、船は万感の思いを乗せて〝別れの汽笛〟を響かせた。
1970年代、国連海洋法会議で沿岸から200海里以内の資源の管轄権を認める排他的経済水域(EEZ)の概念が示され、主要国がEEZを制定。日本も領海に関する暫定措置法を制定した。
これにより、日本の「守るべき海」は領海で約4倍、漁業水域は約50倍に拡大。外交上の課題なども浮上する中、海保の巡視船増強が急がれた。
巡視船ゆうばりは、網走を中心とする極東の海の平和と安全を守るため、臼杵造船所(大分県)で建造され、38年前の85年11月28日、網走海保に配属された。
同船は全長67・8㍍、全幅7・9㍍、総トン数325㌧の中型巡視船で、海上保安庁では「500㌧型」巡視船にランクされる。
海保の中型巡視船の名前は「ちとせ」「とかち」「おきつ」など、日本の河川や島の名前を命名しており、ゆうばりは夕張川が由来となっている。
ゆうばりは網走港を基地に、徹底した監視・取締りの体制を取り、海上における治安維持に対応してきたほか、海上交通の安全確保の活動も行っていた。
就役直後のEEZ制定前は、網走などの漁船が太平洋やベーリング海へ出漁していた時代で、外国船籍との外交上の衝突や直接的な危害から日本船を守った。
冷戦時代はオホーツク海上での国境侵犯が頻繁に起きており、日本の領海を守るための任務にもあたっていた。
海難が発生した際には、迅速に捜索、救助を行うための体制を日々整え、海上における災害発生への迅速な対応、美しい海洋環境を守るための海洋環境保全活動を実施してきた。
東日本大震災で甚大な被害を受けた沿岸域での救命や捜索、遺留品回収などで活動したほか、02年にサロマ湖第一湖口付近で発生した遊漁船の転覆・行方不明事故での救難活動にも従事した
直近では知床観光船「KAZU Ⅰ」の沈没事故で出動。事故が起きた23日は波が高く、二次被害の恐れがあったため出航を見合わせたが、若干、波風が収まった同日深夜に離岸。24日には現場海域で全力を挙げ、昼夜を分かたない懸命な捜索にあたった。
一般的に巡視船は就役後、配置替えがあるが、ゆうばりは大分生まれの網走育ち。 巡視船の耐用年数は25年とされる中、他の港には配置を替えず、就役から解役まで網走港一筋で役目を終える。
見送り式で網走海保の嶋村秀人署長は、船長に花束を手渡し「最後の航海も気を抜かずに」と檄を飛ばすと、船長ら23人の乗組員は改めて気を引き締め、最後の寄港地となる函館を目指して離岸。
岸壁には嶋村署長や梅本哲也次長らの海保職員をはじめ、網走漁協の新谷哲也組合長、市役所の立花学建設港湾部長らが並び、ゆうばりを見送ると、船は「ぶおぉぉーーー」と、網走との別れを惜しむようないつもよりも長い汽笛を鳴らし、旅立った。
市内の会社員は「ゆうばりの岸壁といえば、市民の大半は場所が分かるくらい、親しまれた巡視船だと思う。解役はなんだかさみしいですね」と名残惜しんでいた。
海保はゆうばり解役後、現在紋別港を母港とする中型巡視船「そらち」を網走港に配置替えする。
そらちは全長72・0㍍、全幅10・0㍍、総トン数650㌧の中型巡視船。ゆうばりに比べて大型船で、総体的に能力は上がる。
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