松風町の廃レール架線柱、お役御免【函館】
市電架線張り替え工事で
函館市電松風町電停近くの交差点にある廃レールを組み合わせた架線柱が間もなく役目を終える。市企業局交通部が函館駅前通(国道278号)で架線の吊架(ちょうか)方式の変更工事を進めているため。架線を張る役割は4日深夜からの工事で新たな支柱に引き継がれた。
廃レール柱は高さ約8㍍で、3本のレールを組み合わせた形状。駒場車庫や自由市場前など市内5カ所に同様の架線柱が残るがいずれも設置時期は不明。表面にはさびがみられるが、架線を張る役割を果たしている。同部は「いつから使われているのか資料はないが相当古いだろう」とする。
函館の軌道事業は1897(明治30)年に運行を始めた馬車鉄道が前身で、1913(大正2)年に電力会社の函館水電が電化した。箱館歴史散歩の会主宰の中尾仁彦さん(81)は「断定できる根拠はない」と前置きして、架線柱に使われたのは電化前後の軌道改良で不要になったレールの可能性を挙げる。旧交通局で運転士や軌道整備に関わった市内の男性(77)も「古い時代の35㌔(1㍍当たりの重量)レールではないか」と推察した。
また、度重なる大火に見舞われた函館では、21(同10)年の大火後にコンクリート建築が普及。末広町にある現存最古のコンクリート電柱は23(同12)年製だ。電車の黎明期は、木柱からコンクリート柱に切り替わる過渡期で、強度が求められた架線柱に廃レール柱が用いられたことも考えられるという。中尾さんは「今まで残っていたことも不思議だが、現役で使われてきたことに意味がある」と話している。
駅前通で行われている吊架方式の変更は無電柱化の一環。電車に電力を供給するトロリー線を支える架線は現在の網の目状の直接式から、道路両脇の架線柱から支えるシンプルカテナリ式に転換し、景観上の向上を図る。工期は10月14日まで、松風町の廃レール架線柱も撤去される。
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