廃棄野菜 動物園に寄贈 鶏の伊藤【帯広】
おびひろ動物園(稲葉利行園長)は、地元の事業者や農家から寄せられる野菜を、飼育する動物の貴重な餌として使っている。帯広市内の飲食店「鶏の伊藤」(伊藤有一社長)は6月から、調理で使われなかったキャベツとレタスの一部を、出前の車で毎日のように配達。同園で有効活用されている。
同店は6月下旬から、キャベツの千切りで使わない外側の葉や、傷が付いたレタスの葉などの寄贈を始めた。提供する料理に毎日キャベツやレタスを使うため、1日で45リットルのごみ袋一つになる。それまでは基本的に全て廃棄していた。
「もったいない。どうにかできないか」と考えた伊藤恋(れん)専務(29)が、小さいころから友達や家族と遊びに行った思い出の同園に贈ろうと思い付いてメールを送った。同園と協議した結果、ニホンザルやチンパンジー、カンガルー、鳥類の餌に適した野菜だと確認され、同園に届けることを条件に決まった。
同園では、地元農家から寄贈される夏場以外は、動物が食べるキャベツは購入していた。出前に力を入れる同店は、動物園近くに食事を車で届けており、その足を利用できた。大きな負担にならず、寄贈を続けることができている。
8月16日は伊藤専務が同園を訪問。千葉充規副主幹の説明を聞きながら、届けた餌10キロがニホンザル30匹に与えられる様子を見学した。千葉副主幹から「シャキシャキしたキャベツの硬い部分を好んで食べる」と説明があると、伊藤専務は「意外」と驚き、サルが好きという長女(3)は「かわいい」と喜んでいた。他の来園者も楽しく見学する姿を見て、伊藤専務は「寄贈してよかった。店が続く限り続けたい」と笑った。
全国的に資金難の公立動物園では、外部から積極的に餌を募って活用している。札幌市の円山動物園などは「主要動物餌一覧」を公開するなどしている。
同園では現在、餌を対外的に呼び掛けて募る活動はしておらず、寄贈の申し出に対して必要な食材を受け入れている。鶏の伊藤のほかに、農家や個人の3軒から継続的に野菜が贈られ、伐採した草木の寄贈もある。稲葉園長は「本当にうれしいこと。市民に支えられて60年やってこられた」と感謝した。
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