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十勝毎日新聞

仲間は凍土に眠っている 最後の語り部・吉田さん講演【帯広】

講演を終え、十勝管内の高校新聞局の取材を受ける吉田さん(右)。10代の生徒たちに「『歴史』を知ってもらいたい」と話す(6月18日)

 「帰国できない日本人が大勢いる。(凍土に眠っていることを)忘れないでほしい」「『必ず迎えに来る』と約束したが、80年近く過ぎても、かなえられない。心が痛い」

 6月18日午後。帯広市内のとかちプラザで講演したシベリア抑留体験者の吉田欽哉さん(97)=宗谷管内利尻町=が語気を強めた。

 約100人が耳を傾けた会場の最前列には、高校生の姿も。自らの体験を講演会で披露する吉田さんは、必ず10代の児童・生徒を最前列に招く。「今の若者にはそんな思いはさせたくないし、しっかりと、その『歴史』を知ってもらいたいから」

過酷な環境で4年

 19歳の時から4年間、極寒の地シベリアで、過酷な労働環境の中に身を置いた。それから74年。視線の先には抑留生活で亡くなり、自らの手で埋葬した日本人兵士の遺骨を「必ず、日本に連れて帰る」とする、ぶれない思いがあった。

 利尻島で生まれ育った吉田さんは、終戦直前の1945年6月に19歳で召集された。出征先は樺太(現サハリン)・上敷香(現ポロナイスク)の陸軍病院で衛生兵だった。8月になると、ソ連軍が南下し、陸軍病院は豊原(現ユジノサハリンスク)まで後退した。

 終戦後の22日には激しい空爆に遭った。「左手の肘から下がはじき飛ばされて泣いていた5歳の女の子を今も忘れられない」。78年前の出来事だが、昨日のように記憶する。

 9月には稚内に戻るため、大泊(現コルサコフ)でソ連の輸送船に乗った。ソ連人に「『ホッカイドウ ダモイ(帰国)』って言われた」が、着いた場所は樺太西対岸にある「ソ連のソフガワニ」だった。

 そこから4年間。ロシア極東沿海地方などで抑留生活を強いられ、木材伐採作業やバム鉄道駅拡張工事などのほか、氷点下30度を下回る極寒の伐採作業、過酷な環境に耐えきれずに命を落とした日本人の埋葬にも携わった。

30余のひつぎ埋葬

 47年6月。現在のハバロフスク地方の港湾都市・ワニノで、「日本人だから持って行け」と、ソ連の将校から30余りのひつぎを運んで埋めるように指示された。周りは家一つない原野。仲間6人と、20日間かけて、すべての遺体の埋葬を終えた。「必ず、迎えに来るからな…」。手を合わせ、声に出して誓った。

 49年に利尻町に帰還。コンブやウニの漁に携わりながら、利尻漁協理事や利尻町議も務めるなど、マチの発展にも力を尽くした。90歳を機に、抑留中の自身の体験を伝える語り部としての活動を始めた。

 帯広での講演会。吉田さんは「いまだに多くの人の遺骨は見つかっていない」と強調。「俺は『仲間を連れて帰るまでは、まだ死ねない』」。高校生と語る際に見せた柔和な顔とは異なる鋭い眼光に、その思いが垣間見えた。

<シベリア抑留>
 1945年、ポツダム宣言受諾を境に満州や朝鮮半島、樺太などで、日本軍捕虜などが旧ソ連各地に抑留され、過酷な強制労働を強いられた。その数は57万5000人。このうち約1割が死亡したとされる。日本への帰還は47年から始まり、50年4月末に旧ソ連軍は日本人送還の終了を告げた。

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