沖縄戦の戦没者の日章旗松前の遺族の元へ【松前】
【松前】第2次世界大戦末期の1945(昭和20)年6月に沖縄戦で亡くなった留萌市出身の陸軍兵士、鈴木秀二(ひでじ)さん(当時37歳)の日章旗が26日、米オレゴン州のNPO法人「OBONソサエティ」を通じて松前町在住の遺族に返還された。日章旗は米国の元兵士が長年保管していて、78年の年月を経て長男の鈴木一弘さん(86)の手に渡った。一弘さんは「ありがたい。うれしい」と喜んだ。
同法人によると、秀二さんは日本陸軍第24師団に所属し、食料や武器の輸送などを担う輜重(しちょう)兵第24連隊第五中隊の伍長だった。激戦地だった沖縄本島の糸満市真栄平(まえひら)で、6月21日に亡くなった。
秀二さんの日章旗は米国の元陸軍大佐、エイドリアン・リンジー氏(故人)が戦場から持ち帰り、長年保管していた。リンジー氏が他界した後は孫のジョージ・ヘルムスタッター氏(アイダホ州在住)が受け継ぎ、2020年9月に同法人に所有者、遺族の捜索と返還を依頼していた。
遺族探しを担当したのは、同法人スタッフで、札幌在住の工藤公督さん(48)。日章旗に「留萌土木現業所 鈴木秀二君」などと書かれていたことや、日本遺族会の情報などから秀二さんが留萌市礼受(れうけ)出身と特定。工藤さんはさらに礼受の地域住民などから鈴木家の足跡を尋ね、松前町の一弘さんを探し出した。
26日は松前町役場で返還式が行われ、一弘さんら遺族7人が出席。一弘さんは石山英雄町長から日章旗を受け取り感慨深げに旗を見つめた。同法人共同代表のレックス・ジーク氏、敬子・ジーク氏のメッセージが動画で紹介されたほか、石山町長も「故人の家族への思いと関係各位の平和と友好を思う気持ちが実を結んだ。町としても平和の尊さを次世代につないでいく」と述べた。
秀二さんが出征時、一弘さんは小学校入学前だったが「父はマージャンが好きだった。温厚で優しかった」と懐かしみ、「連絡を受けた時はドキドキした。感謝の気落ちでいっぱい」と話した。一弘さんの次男、修二さん(50)は「日章旗が戻ってくるとは思ってなかった。祖父が眠る沖縄にお参りしたい」と話した。
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