日本初の災害時防災拠点複合役場 日常と災害時の拠点に 小清水町役場が供用開始
【小清水】地域の日常拠点と役場庁舎、災害時防災拠点の機能を併せ持つ日本初のフェーズフリー認証役場「小清水町防災拠点型複合庁舎・ワタシノ」が5月29日、供用開始となった。
前小清水町役場は1962年に完成し、築61年が経過。07年に大規模改修を行ったが、老朽化が進行。耐震も脆弱で、新庁舎の早期完成が求められていた。
町は新庁舎の整備計画を進める中で、町民や有識者の意見を取り入れ、基本構想に①防災拠点の形成②コミュニティの再生③親しみを持って気軽に訪れる空間―を盛り込んだ。
19年に基本計画、20年から基本設計、実施設計を策定。本年度、施設が完成し29日、供用開始となった。
新庁舎の最大の特徴は「日常時」と「非常時」という2つのフェーズ(局面)をフリーにする概念「フェーズフリー」を取り入れたことにある。
フェーズフリーは「身のまわりにあるモノやサービスを、日常時はもちろん、非常時にも役立てることができるという考え方」で、近年、注目を集めている。
地震などの災害が多い日本においては、全国の自治体が公共施設の設計、運用などにフェーズフリーを積極的に取り入れはじめている。
小清水町役場も日常的に「いつもの生活」で利用する〝場〟としての庁舎が、非常時の時にも安全、安心を守る〝場〟として、りようするよう設計されている。
フェーズフリーを根幹にした施設コンセプトは①歩いて回れる街づくりの結節点②町とつながるコンパクトな複合庁舎③町民が集まるいつもの居場所―を掲げている。
一般的な自治体としての役場機能のほか、町民が気軽に集い、快適に過ごせるコミュニティスペース、カフェ、コインランドリーを併設した。
最新のフィットネス機器を備え、町民の健康増進をサポートするフィットネスジムスタジオ、子どもが遊べるボルダリングウオールのある「にぎわい広場」なども整備している。
併設した機能は災害時、カフェは炊き出し所となり、コインランドリーは避難生活の際、町民らが洗濯で使用する。
万が一の避難所生活の際、被災のショックや不自由な避難所生活、ストレスなどで体と心の健康が著しく悪化する懸念が高まる。
避難所でも適度な運動が必要とされる中、フィットネスジムは健康を維持する軽運動などにも利用でき「いつものことが、もしものときに役立ち、価値あるものにするフェーズフリーを具現化した」という。
5月28日には新庁舎完成を記念したオープニングセレモニーが開かれた。
久保弘志町長は「本庁舎は新たなコミュニティの拠点となり、災害時には一時的な避難所として、停電時でも機能できるようフェーズフリーの概念を取り入れた防災拠点型複合施設となった」とあいさつ。
武部新衆院議員は「日常生活の中で、しっかりと災害へ備え、町民が集う施設になった。役場が『行く』ところではなく『みんなに会いに行く』交流施設になり、新たな地方創生のモデルとなった」と祝辞を述べた。
その後、関係者らによるテープカットが行われ「いつもの憩いの場所が、災害時には安心と安全を提供する場所」として生まれ変わった新庁舎の供用開始を祝った。
セレモニーに訪れた親子は「これまでの役場は手続きをしに行くところだったが、新しい施設はカフェや子どもたちが遊ぶスペースもあり、とてもいいと思う。普段でも利用したい」と話していた。
カフェスペースなどは町民以外でも利用できるという。
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