函館市内５漁協の組合員数（１７０３人）が１０年後に約半数の８８４人まで減少する可能性があることが、函館市の初の実態調査で分かった。漁業者の高齢化が進み、後継者もいない危機的な状態が浮かび上がった。市は必要な資格取得や技術習得、漁船などの取得費用に対する支援の検討など、漁業就業者の確保に向けた対策に本腰を入れる考え。

　調査は昨年７～１０月、函館市、えさん、銭亀沢、南かやべ、戸井の各漁協に加入する組合員１７２３人にアンケートを行い、１５１８人（回収率８８・１％）から回答を得た。

　今後、漁業を続ける予定年数を聞いたところ「５年以内」が４１２人（２７・１％）と最も多く、「１０年以内」（３５６人、２３・５％）と合わせると５割を占めた。後継者が「いる」との回答は２７４人（１８・１％）で、そのうちの２２７人（８２・８％）は既に「主に漁業に従事している」と答えており、将来漁業を継ぐ見込みとの回答はわずか１９人だった。

　組合員数の将来推計では、昨年４月１日現在に１７０３人（個人のみ）だったのに対し、５年後に１２２６人、１０年後に８８４人、２０年度に６６０人、３０年後に５８５人まで減少する見通し。

　また、同４月１日現在の年齢は組合員（個人）の平均年齢が６０・７歳で、年齢構成は「６０歳代」が４４２人（２６・０％）と最も多く、次いで「７０歳代」が４０７人（２３・９％）。

　２０２１年の漁業に掛かった支出額（経費）の内訳は、人件費の割合が最も多く、特に人手を多く要する養殖コンブ漁業は人件費の割合が高く、イカ釣り漁業は燃料費の割合が高かった。

　２１年の組合員総水揚高（漁協自営定置は除く）は１１８億７６６７万円となり、うち南かやべ漁協が７６億７２６６万円（６４・６％）を占めている。水揚高別では、３００万円未満が７２１人で全体の４割を占めた一方で、１０００万円以上が３１６人（１８・３％）となった。

　漁業をしている上の課題は「魚やコンブなどの水揚げが減っている」「魚やコンブなどの価格が安い」「経費の負担が大きい」「後継者がいない」の順だった。

　市は対策として漁業就業者に確保のほか、天然コンブの資源回復、漁業所得の向上、高齢漁業者の収入確保、海面・漁港などの有効活用を挙げるほか、課題解決に向け今年度中に市や漁協などでつくる検討会議を設置する。

　市水産課の佐藤貴洋課長は「思ったより深刻な状況 で、早急に何らかの対策を講じる必要がある。イカ釣り漁船が減ると、函館の観光資源のいさり火が見れなくなり、活イカが流通しなくなる可能性がある」と危機感を強調している。