小玉貞良作「江差屏風」が函館市指定文化財に【函館】
函館市教委は12日付で、江戸時代中期(18世紀中頃)に松前で活躍した絵師・小玉貞良(生没年不詳)による「江差屏風(びょうぶ)」(道所有、道立函館美術館収蔵、六曲一隻)を市指定文化財とした。ニシン漁で栄えた江差のにぎわいを詳細に描いている。
新指定の江差屏風は貞良が宝歴年間(1751~64年)ごろに松前と江差の繁栄を描いた「松前江差屏風」の一部で、その最初期の作品とみられる。六曲一双で現存するのは大阪の個人蔵のみで、松前町が所蔵する「松前屏風」(道指定有形文化財)とは対にはならないため、少なくとも3作を描いたと伝わる。1988年に米国で発見された後、京都の個人が購入。さらに函館の個人蔵を経て、2019年に道が購入した。
「江差の春は江戸にもない」とうたわれ、ニシン漁でにぎわった様子と、鴎(かもめ)島で花見に興じる町人の様子が生き生きと描かれている。市教委文化財課は「江戸時代中期における南北海道の街並みや活況がうかがえる風俗画。道内の最初期の日本画として貴重な資料」と文化財としての価値を評価する。
道立函館美術館では直近では3月まで開かれた特別展で江差屏風を公開した。同館は「保存の観点から常設展示は難しいが、近いうちに市民にお披露目できるように検討したい」としている。
市の指定文化財は19年の戸井貝塚出土品以来で90件目。貞良の作品では1962年指定のアイヌ民族を和人の視点で描いた風俗絵「蝦夷国風図絵」がある。
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