駒板さん初の歌集出版 「我が海の歌」355句集録【釧路】
釧路文学団体協議会会長でぬさまい短歌会会長も務める駒板芳夫さん(89)がこのほど、初の歌集「我が海の歌」を自費出版した。高校時代から詠み親しんだ短歌の中から、処女歌集には漁労長、船長として40年間、北洋の漁場に命を懸けた男の韻律355句を集録した。 駒板さんは樺太生まれ。文学への傾倒は砂川南高校時代に育まれた。書店を営む叔父の家から登校し「読む本には困らなかった」と読書を愛し高校に文学部を創設。歌人だった先生の影響で短歌の全国雑誌に投稿し、入選するなどして腕を磨いた。
卒業後、無線通信士や1等航海士の免許を取得し、1969年から釧路市の大勢丸漁業で船長兼漁労長として40年間、主に危険を伴う北洋の漁場で腕を振るった。この間、1970年3月16日、択捉島単冠湾(ひとかっぷわん)で死者・行方不明者30人という過去最大の流氷海難事故に遭遇した。択捉島沖で操業した沖合底引船19隻が単冠湾内で流氷群に突入。脱出した船もあったが転覆・大破する船もあった。駒板さんは生存乗組員として氷上を歩いて択捉島のソ連監視所に救助を求めたという。
この悲劇を思って詠んだ句は「エトロフの沖に避泊の僚船に流氷襲い全てを奪う」「経文に名前を記し十三枚エトロフ沖に流し網曳く」。釧路市公民館に1000人を集めて執り行われた合同葬儀では、駒板さんが生存者代表で弔辞を読んだ。「少し違えば私も海の藻屑(くず)となっていた。海に散った彼らの無念を思いつつ、哀悼の意を込めた歌集とした」。
駒板さんの師で新墾社を主宰する足立敏彦氏は、巻末に歌集評を記し「鎮魂と闘魂の叙情をかけがいのないものにしている。まさに海の男の韻律である」と評している。A5判181㌻。150部を印刷し関係機関などに配布。釧路市中央図書館にも寄贈しており、順次閲覧できる予定だ。
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