釧路地方にとって「母なる川」とも言える釧路川と周辺に広がる釧路湿原国立公園を巡視して保全しているのが河川巡視員。釧路開発建設部釧路河川事務所の委託を受けて業務を行っているが、１０人のうち７人が女性が務めている。北海道開発局で女性の河川巡視員は同河川事務所のみ。車上や徒歩で巡視して維持管理状況、不法投棄されたごみ、災害情報などを常に把握、河川や自然環境の保全に貢献している。

　河川巡視員は、同河川事務所が管理する河川とその周辺での違法行為の発見と報告、河川管理施設や許可工作物の維持管理の状況把握、河川利用や自然環境に関係する情報収集、災害時の出水状況の確認が主な業務。具体的には河川や釧路湿原などに廃棄された不法投棄物の回収、堤防道路の工作物が壊れていたり穴が空いていた場合は危険防止のための保安措置を行う。また、水質や自然環境の変化、貴重な野生動物の生息状況、カヌーなどのレジャーに関係する情報も収集する。

　同河川事務所の巡視区域は釧路川と新釧路川、オソベツ川で、管理延長は１０２・８㌔、面積４１３２㌶に及ぶ。この広大な区域と河川を巡視員３人、運転員３人、代務者４人の１０人で担当。このうち７人が女性。

　巡視は通常、巡視員１人と運転員１人の２組で、それを３グループで行っている。車上からと徒歩が中心だが、釧路湿原では特別な許可を得て動力船による巡視、カヌーによる巡視も行っている。不法投棄では２０２１年度で２３７件、約６７０㌔㌘を回収している。

　委託を受けて従事する標茶町在住の村上美幸さん、矢島花絵さんは共に１０年以上のベテランで、平均して１日で延べ１００㌔以上を受け持つ。巡視中には周囲の住民から不法投棄に対する苦情や要望も寄せられるそうで、タンチョウなどの野生生物を驚かせないようにも配慮する。また、タイヤやソファー、冷蔵庫などの不法投棄の回収にも対応してきた。

　村上さんは「河川や湿原はきれいな方がいい。観光客も多く訪れるので気を付けています」、矢島さんは「河川や湿原をきれいに利用してほしい。きれいにしてもらうとうれしい」と話す。菅野法之同河川事務所長は「巡視に携わる女性は川と湿原の保全に大きな力となっている。特に、地域の自然を見守り、住民との接点ともなっている」と話し、河川と自然の守り人とその業務を評価している。

カヌーで巡視に当たる巡視員ら（北開水工コンサルタント提供）