現代の宗教観・生死観を分析 佐々木馨さんが新著【函館】
道教育大学名誉教授の佐々木馨さん(76)=函館市=がこのほど、新著「日本仏教の近代化と現代の宗教観・生死観」を仏教書専門の山喜房佛書林(東京)から出版した。函館校在職中に実施した学生への調査から若者の宗教観や生死観を分析し、まとめた。
日本中世宗教史が専門の佐々木さんによる通算19冊目の単著。3部構成の前編は「日本仏教の近代化」として、明治以降の近現代の仏教史、宗教史に関わる通説を整理。中編では「現代日本の宗教観」、後編は「現代日本の生死観」として、学生に実施した調査やリポートから現代青年の考えを分析した。
生死観では、日本人学生のほか、中国・山東師範大学から道教大大学院に進学した郭明芳氏との共同研究で、中国人にも同内容の調査を実施。中国では宗教や来世、霊魂に対する否定派が半数で、宗教への無信仰化を示すように中間派が多い日本人と異なる傾向があり、「死の恐怖」も日本人より「感じる」とした割合が低かった。
多くの学生は先祖供養が必要と考え、仏教の教えが日本人の道徳観やものの考え方に影響していると捉えた。佐々木さんは「仏教には葬祭仏教、生活仏教の2つの形が存在する」と指摘する。
また、神社での初詣や例大祭、彼岸、盆の先祖供養、クリスマスなど宗教の年中行事が生活に溶け込み、地域に密着、定着した事例は多い。学生も仏教、神道、キリスト教には肯定的な意見が多い一方で、新宗教(新興宗教)には否定的なイメージが強かった。佐々木さんは戦前・戦中の皇国史観に対する反発や一つの宗教を信じることへの忌避感、アレルギーがあると指摘。「日本は『無宗教』の国と言われるが誤りで、実際は『寛容な多重信仰の国』だといえる」としている。
A5判、240ページ。3850円(税込み)。
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