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函館新聞

暮らしと歩み108年 老舗銭湯「大正湯」閉業【函館】

108年間に及んだ地域の支えに感謝する小武さん

 1914(大正3)年創業で函館市弥生町の老舗銭湯「大正湯」が8月末で閉店した。重油高騰と8月中旬に機器の故障が重なり、閉店を決断。築95年となるピンク色の板張りの瀟洒(しょうしゃ)な建物とともに地域住民の暮らしと歩み1世紀余り。西部地区に残った最後の銭湯だった。3代目店主の小武典子さん(72)は長年の地域の支えに感謝している。

 大正湯は、小武さんの祖父、三蔵さんが現在地近くにあった銭湯を買い取って創業。27(昭和2)年建築の現在の建物は、三蔵さんが船大工として行くことがあったロシア・カムチャツカの建物をイメージしたもの。はめ込みの鏡など脱衣所は建築時の雰囲気を色濃く残し、船の技法で作られた番台は三蔵さんが手掛けた。

 戦後間もない45(同20)年に2代目となる小武さんの父、茂さんが後を継いだ。同年7月14日の函館空襲によって、現在の弥生町一帯で大火災が起きたが、大正湯と周辺数棟を残して寸前のところで戦火をまぬがれた。復興期から高度成長期は、昼間に漁業者、夕方にドックの工員、合間に近所の人たちが大勢集う社交場でもあった。

 建築当初の外壁は濃緑色。茂さんが建物を明るい色にしたいと考え、ベージュに始まり、徐々に赤を加えてピンク色で定着。数年前に塗り替えた現在は色抜けも少なく、やや濃いめだ。小武さんは「父は絵を描く趣味があったので、塗り替えの時にその場で色を指示していたのを覚えている」と話す。

 建物の保全にも努めた茂さんは2009年2月に亡くなり、小武さんが3代目としてその思いを受け継いだ。ただ、公衆浴場を取り巻く経営環境は厳しく、18年には同じ弥生町内にあった別の銭湯が廃業。この4年間は西部地区で最後の銭湯となっていた。

 小武さんは「建物が100年になるあと5年は続けたいと思っていた」とする一方、今年の1~3月には昨年の2倍の重油代がかかり、「年内の心づもりでどう閉めようかと考え始めていた」と話す。その矢先、8月17日にろ過機器が故障。当日は来店者にお湯の濁りを説明して営業したが、翌日から休業。大規模修繕が必要と判明し、引き際だと決断した。ただ、閉店を周知する時間がなかったことを悔やむ。

 50年生まれの小武さんの生家であり、幼少期から脱衣所のかご整理など家業を手伝ってきた場所。「友人も帰省時に入りに来てくれて顔を合わせることができた。閉店を知った同級生からも『頑張ったね』と声を掛けてもらった。この場所で続けてこられて良かった」と話す。小武さんはそのまま住み続けるが、銭湯部分の今後は未定。「家の中の整理をしながら、体のケアも大事にしていきたい」と話している。

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