祭壇に献花をする大塚さん（団員提供）

　北方領土に眠る親族の霊を船上から慰める洋上慰霊が７月３１日、根室港発着で行われた。国後島コース初日となったこの日は、事前のＰＣＲ検査で新型コロナウイルス陽性者と、その濃厚接触者が不参加となり、元島民はじめ２～４世までの後継者と同行者計３３人が参加した。

　チャーター船「えとぴりか」（１１２４㌧）は、国後島を望む羅臼沖で甲板に設けた祭壇で慰霊式を行った。参加者代表の千島歯舞諸島居住者連盟理事で羅臼支部長の鈴木日出男さん（７０）＝国後島２世＝は、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻によって古里の島への訪問機会が奪われた無念さに触れながら「一日も早い北方四島の返還を目指し、粘り強く返還要求運動に全力で取り組むことを誓う」と追悼の言葉を述べた。

　国後島に祖父母や兄などが眠る同島出身の大塚小彌太さん（９３）＝札幌市＝は「実際に行くのとは違い島は見えたが遠く、泊山は見えたが住宅とかは一切見えなかった。年代的にもこれが最後ではないか」と述べた。さらに「３年ぶりに慰霊ができたのは良いが、正式に墓参に行けるよう、政府には折衝してもらいたい」と話していた。

　道と千島連盟が主催する洋上慰霊は、先月２３日から歯舞群島コースが４回行われ、この日初日を迎えた国後島コースは１０日まで計６回予定されている。