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函館新聞

東日本大震災から11年/「日常が幸せ」齊藤悠香さん一家、東京から函館へ【函館】

「函館は住みやすい」と声をそろえる齊藤悠香さん(右から2人目)と子どもたち

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故は、多くの人たちの生活を一変させた。東京から函館へ避難してきた齊藤悠香さん(40)もその一人。避難から11年がたち、家族6人で函館に根を下ろし、生活の基盤を築いた。齊藤さんは「何気ない日常が一番幸せ」と今の幸せをかみしめる。

 震災時、齊藤さんは家族で東京ディズニーランド(千葉県浦安市)に遊びに出掛けていた。遅い昼食後、強い揺れに襲われた。車で行っていたが、道路が液状化の被害を受け、駐車場から出られるか分からず、その日はディズニーランドのレストランに段ボールを敷いて一夜を過ごした。齊藤さんは3人目となる長男(現在小4)を身ごもっていた。

 翌日、無事に帰宅したが、激震と津波に伴う原発事故が発生。子どもたちを屋外ではだしで遊ばせたり、草花を触らせたりする当たり前の日常が奪われた。当時住んでいた江戸川区は、放射線量の高い「ホットスポット」が出現し「政府は放射能の影響について『直ちに影響はない』を繰り返すばかりで、不安が高まった。1カ月は外にも出たくなかった」(齊藤さん)。放射能の影響を恐れ、おなかの子と2人の子どもの安全を考え、函館への避難を決めた。

 函館には知り合いも親戚もいなかった。しかし、齊藤さんは小6のとき、1年間、山村留学制度を活用し今金町の美利河小に通った経験があった。北海道になじみがあり、山と海に囲まれ、自然が残る函館は適地だった。

 震災から1カ月後の4月中旬、実母、長女(同高1)、次女(同中2)、長男をおなかに宿した状態で函館へ。当初は1年という期限付きだったが、原発事故の収束が進まず、函館の自然や食、人が気に入ったこともあってそのまま居ついた。齊藤さんは「最初は灯油をどこで買えばいいのか、部屋にベランダがなくどこに洗濯物を干せばいいのか分からず、近所の人に尋ねたことも。函館の人はみんな優しく、物心両面で支援してもらい、とてもありがたかった」と振り返る。

 7年前には、夫も仕事を辞めて函館へ移住。3年前には三女(同3歳)も生まれ、長女と次女は東京よりも函館の生活の方が長くなった。実母は夫と入れ替わりで東京に戻った。

 函館での生活について、齊藤さんは「水、空気、食べ物がおいしい。山も海もあり、全てがそろっている」と強調。子どもたちを外で自由に遊ばせ、水道水をそのまま飲めることが何よりうれしい。

 齊藤さんは現在、パート従業員として市内の障害福祉施設のレストランで厨房(ちゅうぼう)に立つ。実務経験を積み、猛勉強の末、調理師免許も取った。齊藤さんは「将来は飲食店を独立開業したい。函館のおいしい食材で料理を作り、喜ばせたい。お世話になった函館に恩返しができたら」と心に誓っている。

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