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十勝毎日新聞

海から天狗 珍種・クロテングギンザメ【広尾】

 十勝沖で広尾町の漁船が、珍しい深海魚「クロテングギンザメ」を捕獲し、研究者の間で大きな話題を呼んでいる。魚体の保存状態が良好なことから標本として博物館に寄贈、魚を捕獲した漁業者や漁船名などの情報も登録されることになった。関係者は「従来とは違う形で、広尾の漁業が全国に発信される」と喜んでいる。

十勝沖で捕獲されたクロテングギンザメ。体長は約1メートル(保志弘一さん提供)

 1月29日、第151関丸のスケトウダラの刺し網にかかり、生きた状態で港に持ち帰った。魚の写真をネットで紹介したところ全国の研究機関、水族館などから反応が寄せられた。東大大学院農学生命科学研究科付属水産実験所(静岡県浜松市)に解析を依頼、冷凍処理した魚体を送付した。

 クロテングギンザメは水深500メートル以下で生息するが、広尾では水深350メートルの地点で捕獲された。珍しいケースで、本州と比べて水温の低さが要因とみられる。魚の標本は神奈川県立生命の星・地球博物館(小田原市)に収蔵される。

 東大付属水産実験所の手良村知功さん(26)は「人類共通の財産にすべきと考えた。標本として数十年、数百年先まで残る価値は十分にある」と強調。第151関丸の伊東正人船長(67)は「見たことのない魚だった。船名も記録されることになり光栄」と語る。

クロテングギンザメを捕獲した第151関丸

保志さん調査 「歴史に残る」

 伊東船長の依頼で魚種を調べ、東大の実験所にアクセスしたのが若手漁業者の保志弘一さん(36)。「ネットを通して雑魚にとんでもない価値があることが判明し、漁業者や船の名も歴史に残ることになった。珍しい魚の情報を発信・共有することは地域の漁業振興につながる」と話している。

<クロテングギンザメ>
 黒褐色の魚体に、剣状に突出した吻(ふん、動物の口先)が特徴。最大で全長2メートルになる。北海道以南の太平洋側、東シナ海、南西インド洋、南東大西洋などに分布。1999年に新種登録された。

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