青函連絡船の功績知って 60年前の手作り模型、JRイン函館で展示【函館】
函館市若松町のホテル「JRイン函館」(宮川岳三支配人)に18日、元国鉄職員の故小野昭一さんが昭和40年ごろに作ったとみられる青函連絡船「十和田丸(初代)」の模型が贈られた。12階ラウンジに置かれ、利用客に連絡船の功績などを語り継ぐ、新たな船出となった。
同市八幡町に住んでいた小野さんが約30年前に亡くなり、昨年9月、家を取り壊すため玄関の棚の上にあった同模型を、長男の栄一さん(68)がNPO法人語りつぐ青函連絡船の会(湯川れい子理事長)へ贈呈した。同ホテルが地域に根差した「鉄道と青函連絡船の記憶を刻むホテル」として連絡船の模型を探していたことを同会が知り、市青函連絡船記念館摩周丸館内で修復し、今回の贈呈となった。
栄一さんは「私が小学生の時に家に帰ると父が2、3年かけて作っていた」と話す。模型は縮尺100分の1で全長1メートル20センチ。同会によると、底部周辺は木、甲板は金属や真ちゅうを使用。日差しを受けず、湿気もなかったことで60年近く経っていても状態は良好だったという。
修復は津軽海峡フェリー船舶職員(機関士)で北斗市在住の田中良拓さん(31)が休日に同館へ通い、少しの塗装や電球の一部をLEDに変更、灯台や岸壁も作り、約半年で仕上げた。「自分の考えで直すのではなく、作者の思いを大切に作業した」と振り返る。「コロナの影響でホテルへの贈呈が遅れてかわいそうだったが、無事お披露目できて良かった」と表情を緩めた。
初代の十和田丸は1957年、54年に台風の影響で沈没した洞爺丸の代わりとして就航。船尾扉など安全対策を施している。66年に貨物船「石狩丸」として改造され、67~77年に再就航した。同会の白井朝子副理事長(70)は「姉妹(同型)船はなくこの模型は貴重」と話す。
栄一さんは「大勢の人に見てもらえることで父も喜ぶと思う。このような素晴らしい連絡船があったことを若い人たちに伝えてほしい」と願った。
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