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十勝毎日新聞

そば慰問「命ある限り」 少年院閉院、及川さん移送先で継続【帯広】

 帯広市内のそば店「良庵」(大正本町本通3)の店主及川良さん(69)は、帯広少年院でそばの慰問を続けて11年。年2回ほど出向いて年越しそばなどを振る舞い、少年らに元気を与えてきた。同少年院は今年度で閉院、統合されるが、「願いは一つ。社会に出て、立派にやってほしい」と、これからも少年らの更生を見守ろうと考えている。

真剣な表情でそばを作る及川さん

 及川さんがそば慰問を始めたのは、開店翌年の2010年。きっかけは、店を始めて社会の役に立ちたいと考えていたとき、客で来店した同少年院職員の一言だった。

 「在院者の少年は年越しにカップ麺のそばを食べている」。刑の執行などで収容中の身とはいえ、その環境を思いやり、「塀の中では外の物なんてめったに食べられないだろう。そば打ちなら長く続けられる」と慰問を思い付いた。定休日を使って少年院を訪れ、そば以外にもイクラ丼を振る舞うなど、愛情のこもった料理を食べさせた。

 外部の人と在院者は会話を禁止されているが、慰問を長く続ける及川さんには、講話する機会も設けられた。実は及川さんには、川崎市に住んでいた10代の頃、暴走族に入っていた時期があった。「自分もあの子どもたちと似たような経験をしてきた。そんな話をすると興味深く聞いてくれた」と語る。

 少年院では、本人の準備ができていても、保護者や受け入れ先が整っていないために、出院できないケースがある。慰問では同じ少年がまだいると気付くことがある。「本人だけではなく、大人にも責任がある。覚せい剤や詐欺の受け子…、昔に比べて大人のいいなりになってきた子が多い」と感じている。

 及川さんには、この11年の間で忘れられない出来事があった。ある日、親子連れの客が店に訪れた。「俺のことなんか覚えていないよ」。席からつぶやくような声が聞こえてきた。雰囲気や背格好で「あのときにいた子だ」とすぐに分かった。ただ出院者に自ら声を掛けることは止められている。「『君の味方が、おじさんがここにいるよ』と伝えたかった」。及川さんはそばを大盛りにして、何も言わずにテーブルに置いた。

 「少年院に入ったとしても、いくらでもやり直せる」。及川さんはそんな思いで、少年らにそばを作り続け、今年7月で閉院前の慰問を終えた。今後、帯広の在院者が移送された北海少年院(千歳市)でも、そばを振る舞う予定だ。「ここで終わったら意味がない。俺はまだまだやるよ。命ある限り続けたい」

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