酒類卸販売の五明（釧路市末広町３、五明龍哉社長）は釧路出身で日本を代表する建築家、毛（も）綱（づな）毅（き）曠（こう）氏（１９４１─２００１）が設計し、釧路市内における最後の作品とされる旧ふくしま医院（浦見４）の建物と土地を取得し、１棟貸しの宿泊施設「霧ノ音─ＫＩＲＩ　ＮＯ　ＯＴＯ─」としてリニューアル、完成させた。宿泊客は国内外の富裕層をターゲットとしており、予約は来年１月から開始する。最大の特徴は酒類を扱う同社の強みを生かしたビールや日本酒、ドリンクなど約３０種類の飲み放題。

　同建物はふくしま医院が２０００年に施工したもので建物の延べ面積は３８４平方㍍。鉄筋コンクリート２階建て。２３年７月に同院が閉院する際に売り出されていたことから、今年１月に取得した。五明社長は「釧路出身の毛綱氏の設計なので、地元の人が買ってほしいと思っていたが、買い手が付いていなったので購入を決めた」と話す。

　室内のホール部分は吹き抜けで中央には最大１０人が座れる長テーブルが置かれ、宿泊者の食事や団らんの場にしている。室内には毛綱氏の版画が６枚飾られ、ホールの壁には巨大な版画も飾られている。居室は全４室で１階にはキッチン、リビング、浴室のほか、ランドリーが備えられている。キッチンは設備が整いシェフを呼び料理を作ることもできる。また、市内栄町４の「炉ばた居酒屋はたご家」と提携しているのでケータリングも可能。バーカウンター横には洋酒や日本酒などが並んでいる。

　各居室にはコンセプトを持たせて霧や霧の湿原、夕日をイメージした内装に仕上げ、それに合わせたアートも飾っている。入り口にはアイヌ語で居室名を表記。このうち、２階の居室は「ＡＴＵＹ（アトウイ）」という名前で室内は航海を渡るイメージに仕上げ、窓からはホール全体が見渡せる特別な部屋となっており、毛綱氏の版画が２枚飾られている。

　 一棟貸し料金は平日１泊１２万円から。最大で１６人まで宿泊できる。地元の人のアート作品展示も準備中で、五明社長は「毛綱建築は市民の宝だと思っている。市民に愛される施設になればと思っているので、今後、閑散期には音楽イベントや婚礼場所としても考えていきたい」と話している。問い合わせは、五明０１５４（２５）１７５５へ。

大きな長テーブルが置かれ、毛綱氏の巨大な版画が飾られているホール（五明提供）