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十勝毎日新聞

家畜ふん尿燃料 燃焼確認 ISTロケットエンジン試験「狙い通りの性能」【大樹】

 大樹町内の宇宙開発スタートアップ企業インターステラテクノロジズ(IST、稲川貴大社長)は7日、町浜大樹の試験場で、液化バイオメタン(LBM)を使った小型人工衛星搭載用ロケット「ZERO(ゼロ)」のエンジン燃焼器試験を行い、報道陣に公開した。同社によると、家畜ふん尿由来のLBMを使った燃焼試験は民間企業では世界初。また、ISTはゼロの大型化や能力増強を進めることも明らかにした。

液化バイオメタンを燃料とした燃焼実験の様子(インターステラテクノロジズ提供)

 LBMは、町内の2牧場から出る牛のふん尿によるバイオガスが原料。産業ガス大手エア・ウォーター北海道(札幌市)が昨年10月から稼働している帯広市内の工場でLBMを製造し、「エネルギーの地産地消」を後押ししている。

 LBMを使った燃焼試験のシリーズは11月28日に始まり、この日が4回目。推進剤のLBMと液体酸素を用いて予定していた約10秒間の燃焼を行い、燃焼性能などを確認した。極低温のLBMが燃焼器を冷やす「再生冷却方式」の試験も併せて実施。一連の実験は来年1月末まで続け、搭載するセンサーやガス量などを調整しながら、各種データを集める。

 今回の燃焼器は実機モデルより一回り小さく、実機モデルの燃焼試験は来年の早い段階で行う予定。燃焼器に推進剤を送り込むターボポンプなども開発中で、最終的に全ての部品を組み合わせたエンジン統合試験を行う。

 液化メタンはロケット燃料として世界で主流となりつつあるが、同社によると、バイオメタンによるロケットエンジンの燃焼試験を行ったのは、IST以外では欧州宇宙機関(ESA)のみという。

 稲川社長は「これまでのゼロ開発の中で最も大きな試験。無事にデータが取得でき、非常に大きな一歩」と手応えを示した。LBMについては「狙い通りの性能が出ている。地下由来の液化天然ガスに比べて純度が高く、酪農が盛んな地元大樹からエネルギーを得られる」と利点を強調した。

試験現場の映像をバックに話す稲川社長

「ゼロ」大型化へ

 ISTは9月、ゼロの開発計画が文部科学省の中小企業イノベーション創出推進事業に採択された。上限20億円の交付が決まり、「昨年から検討していたゼロの大型化や能力増強に着手した」と稲川社長。全長は従来の25メートルから32メートルとし、地球低軌道に最大800キロの人工衛星を運ぶことを目指す。エンジンを1段目に9基、2段目に1基搭載する2段式で、打ち上げは2024年度以降の予定。

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