釧路市出身の元アイスホッケー選手で、日本製紙クレインズとひがし北海道クレインズで活躍した伊藤賢吾さん（４４）をたたえるイベント「伊藤賢吾フレンドリーマッチ」が４日、釧路アイスアリーナで開かれた。昨季を終え、２６年の選手生活に幕を下ろした伊藤さんは、駆け付けた733人のファンに、旧友との試合を通じて最後の雄姿を見せたほか、引退セレモニーで感謝の言葉を述べた。（鈴木大聖）

　伊藤さんは１９９７年に日本製紙クレインズ入り。走攻守そろったＤＦで、アジアリーグのみならず、日本代表としても奮闘し、２０２２─２３シーズンまでの２６年間、第一戦でプレーし続けた。

　フレンドリーマッチは、小学生の部のエキシビジョンマッチで開幕。中学生の部、高校生の部と続いた後、メインの部を実施。十條製紙アイスホッケー部、日本製紙クレインズ、ひがし北海道クレインズで活躍した往年の選手や現役選手など、伊藤さんとプレーした幅広い年代の〝戦友〟が集まり、チームホワイトとチームブラックに分かれて対戦した。

　選手たちは一人一人紹介を受け、日本製紙時代の白と黒のユニホーム姿で氷上に登場。試合は前後半２０分で行われ、前半１７分に伊藤さんが自身の花道を飾るゴールを挙げると、会場はひときわ盛り上がりを見せた。観客らは一日限りの豪華メンバーの共演を楽しんだ。

　引退セレモニーでは、旧友からのメッセージ動画や家族からの花束贈呈の後、伊藤さんがリンク中央に立ってあいさつ。「一番近くで支えてくれていた妻と息子の試合前の『頑張ってね』と試合後の『お疲れさま』が力になったし、２６年間、たくさんの方々に支えられ、やりきることができた。温かいご声援ありがとうございました」と目を赤くしながら語った。

　最後は「この釧路で、トップリーグに参戦できずに苦しんでいる元チームメートがいる。そのチームメートが再びトップリーグに参戦し、皆さまの前で元気にプレーすることを願う」と結んだ伊藤さん。拍手に包まれる中、仲間たちから胴上げを受け、慣れ親しんだリンクを後にした。

親子でプレー「ありがたい」

　○…メインの部だけではなく、小中高生の部にフル出場した伊藤さん。これからのアイスホッケー界を担う若い世代に胸を貸した。中学生の部では、鳥取中学校アイスホッケー部に所属する息子の来琉選手（３年）と同じセットを組み、息子からのアシストを受けて父がゴールを決める台本通りのようなプレーを見せた。 　フレンドリーマッチ終了後、取材に応じた伊藤さんは「一緒にプレーする機会は絶対ないと思っていたので、こうやって企画していただいてありがたかった」と笑顔。小中高生には「全国１位を目指してやってほしい」とエールを送った。 　釧路のアイスホッケー界の現状にも触れ「氷都釧路と呼ばれている町なので、子供たちが目指せるようなトップのチームは必ず必要。どんな形でもいいから残してほしいと思う」と切なる希望も話した。

晴れやかな笑顔で詰め掛けたファンに手を振る伊藤さん

十條製紙アイスホッケー部、日本製紙クレインズ、ひがし北海道クレインズで活躍した選手たちと一緒に記念撮影