日体大付属高等支援学校の生徒や従業員から収穫したカボチャの説明を受ける小林会長（後列右から２人目）

　【網走】業務用加工ワサビで国内トップシェアを誇る金印（名古屋市）の関連会社、金印アグリ（市呼人）が、網走刑務所農場で加工用カボチャを栽培している。同刑務所の未利用となっている農地を有効活用する「リエントリー事業」を活用したもので、同事業に参加している日体大付属高等支援学校の生徒がこのほど、同農地でカボチャの収穫に協力。同社の小林一光会長も同農地を訪れ、収穫作業を視察した。

　昨年から栽培しているカボチャは人気の品種「えびす」で、今年は７㌶を作付け。同品種は１反当たりの平均収量が１・７―１・８㌧だが、同農場では約２㌧と、平均より多い収量を見込んでいる。今年は猛暑に見舞われたにもかかわらず、出来は悪くないという。

　収穫作業は同社の従業員に加え、刑務所農場地ということもあり網走刑務所の受刑者や保護観察官、保護司、また同事業で同じ農地を利用している日体大付属高等支援学校の生徒が行った。

　このうち、同校の生徒は各学年が１日ずつ同農地を訪れて収穫。畑に入ると、ラグビーボール大に育ったカボチャを次々と集め、それを従業員の運転するトラクターで収容していった。

　同農場を訪れた小林会長は、「今日の収穫、頑張ります！」とあいさつする同校の生徒に「みなさんの力を借りることができて、たいへんありがたい」と礼を述べていた。

　金印は業務用の粉ワサビで知られるが、その原料となる山ワサビの栽培を網走で始めたのが小林会長。当初は、なかなか市内農家と栽培契約ができなかったが、網走刑務所に農地があると分かり、栽培契約を結んで以降は農家にも信頼され、契約を結んでいくことができたという。

　これをきっかけに１９６８年、市内に乾燥工場を開設。市民にも「呼人の金印」として、なじみが深い企業となっている。

　それだけに網走、特に刑務所農場は思い入れがあり、小林会長も「網走は好きなまちです」と語る。

　「小さなことでも、広がっていけば網走にとっても良いのでは。収穫したカボチャは加工用としてそのまま出荷するが、せっかく網走に工場があるので、将来は新商品開発も考えたい」と小林会長。広大な刑務所農場から、同校生徒の手で次々とカボチャが収穫される様子に目を細めていた。

　網走刑務所は、総面積１６００㌶という全国で最も広い敷地を持つ半面、未利用となっている農地や森林などがあることから、18年に国や地域の関係省が協議。新規作物の可能性や出所者の雇用、また学生の実習などでの活用といった案が出され、有効活用に向けた具体的な準備が進められてきた。

　20年には、市や利用を希望する団体、企業などの６者で構成する「リエントリー委員会」が発足。同刑務所から許可をもらい、利用している。

　現在、同社のほか日体大付属高等支援学校がブドウ栽培で利用。ＪＡオホーツクもトウモロコシなどを栽培しており、同委員会や市は「持続可能な産業の振興、共生型地域社会を実現したい」と、同事業に期待をかけている。