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網走タイムズ

どこよりも安全な海へ 海難事故早期救助システム「よびもり」 知床で実証実験

要救助者の位置などの発信機「よびもり」

 【斜里】知床から海難事故を無くしたい―。観光船事業者や漁業者、斜里町らが連携して海難救助サービス「よびもり」の実証実験が25日、斜里町ウトロで行われた。サービスが地域に実装され、船舶からの転落事故などでの効果が期待されている。

 よびもりは、衛星利用測位システム(GPS)を搭載した縦横約4㌢の発信機のボタンを長押しすると、事前にアプリケーションを登録しているスマートフォンにSOS信号が届くというもの。

 登録は、漁業者や観光船事業者ら「同じ海域で仕事をしている人」とその家族、関係者を対象としており、SOSは「この海域」の登録者全員に送られる。

 SOS受信したスマホは、緊急ブザーが鳴り響き「誰が」「どこで」「いつ」転落したかがわかる情報が、スマホのマップと共に表示される。

 近くで操業、航行している登録者が受信した場合、位置情報で示された現場に急行することが可能となり、捜索開始時間を大幅に短縮することができ、結果として救助への時間が短くなるという。

 また、登録している全員が、要救助者や他の登録者の位置、誰が向かっているかなど、捜索状況に関する情報をリアルタイムで共有でき、捜索の迅速化かつ効率化が図られる。

 システム開発者で紋別市出身の千葉佳祐さんは48年前、羅臼沖の海難事故で漁業者だった祖父を亡くし、遺体が見つかっていない親族の1人。

 大学生のとき、海難事故を無くすためのサービスを作り出すため学生企業して現在の株式会社よびもり(本社・札幌市、千葉佳祐CEO)を立ち上げた。

 今年1月、羅臼町で観光船事業者や漁業者、町らの関係機関、団体と実証実験を実施。今回は2回目の実証実験となった。

 ウトロでは、観光船事業者や漁業者の〝海の男〟に加え、オホーツク総合振興局と斜里町の約40人が実験に参加した。

 ウトロ漁港から直線で約3㌔、プユニ岬沖1㌔強の海域で、クルーズ中の旅行者が誤って船から転落した想定で行った。

 海中転落者に見立てたブイに、よびもりを装着してSOSを発信。SOS(事故情報)を受け、現場海域から3㌔ほど離れている移動中の観光船と漁船、ウトロ漁港に停泊中の漁船が救助に急行した。

 ブイには旗など、目立つものをあえて装着せず、実際の救難者を発見するイメージで、会場に見えるのは、直径30㌢ほどのブイの一部だけ。

 通常、波のある海上で、海に浮かぶ人を発見するのは、極めて困難だが、1㍍を切る精度のよびもりの位置情報で、約11分でブイを発見、救助することができた。

海中転落者に見立てたブイに引き上げる漁船・観光船

 実証実験後、知床小型観光船協議会の神尾昇勝会長は「知床は救助要請した際、(救助までに)時間がかかる可能性がある海域で、よびもりは課題を解決する1つの有効策。事故が起きたこの現場で率先して取り組むべき」と話した。

 その上で「知床全体が救助の早い海域になることは、安心してお客さまに乗っていただける環境につながる。コストなどのハードルはあるが、観光船以外でも海に出ている人同士、お互いに救助しあえる環境となれが、安心できる海になっていくと思う」とよびもりの有効性を語った。

 羅臼町での実証実験では、参加者は「位置情報に誤差はなく正確。夜明け前など暗闇での事故でも救助者を見つけることができるだろう」などと評価する声もあった。

 また「これまでの転落事故は、いつ、どこで起きたか分からず、発見できないのがほとんど。(よびもりが)実用化されていれば、ほとんどが助かっただろう」と振り返る船長もいた。

 千葉CEOは「海の事故は1週間以上探しても見つからず、打ち切りというのが一般的な世界観。知床を『日本で1番、救助が早い海』にするため、海に出る人の全員が最速の救助を受けられるサービスの実装を目指していきたい」と意欲をみせた。

 その上で「観光船の事故が起き、痛みを受けたエリアで、しっかりとアクションを起こし、知床の海の安全性をより高め、発信していくことで再び観光客でにぎわう地域になると信じている。海のリスクを低減し、自然豊かな知床を再活性化したい」と語った。

 同社によると、2017―21年の過去5年間で海難に遭った船は1万127隻、事故者は4381人に上り、漁業者の海中転落の死亡率は64%以上という。

 また、事故の認知には数時間を要することが多く、命を落とすケースが後絶たない。  同社は「助け合いでお互いの命を救う〝最速の救助〟ができる海を広げていきたい」とサービスの拡大を目指している。

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