未利用魚を使った商品開発に取り組むプロジェクトメンバー

　函館・近郊の企業４社と現役漁師が、函館で水揚げされた未利用魚介類を食べられるよう加工して販売する「未利用魚介プロジェクト」を立ち上げた。地場素材を使った商品企画を手掛ける合同会社ＥＧＡＯ（函館市桔梗３）のプロデューサー、川崎良平さん（４２）は「一過性ではなく、道内や全国各地で取り組めるモデルにし、（漁船の）燃料代やフードロス解決などにつなげていきたい」と期待を込める。

　未利用魚は、サイズが規格外または市場価値が低いために廃棄されたり獲れてもリリースされたりする魚介類。市漁協所属の漁師熊木祥哲さん（４２）によると、昨年秋、函館近海の定置網に小ぶりのサバが大量に水揚げされたが、市場に出荷してもほとんど値がつかなかった。漁に出ても燃料代の足しにもならず、漁師の大きな負担となっているという。

　こうした現状を打破すべく、川崎さんが発起人となって同プロジェクトを発足。熊木さんの定置網にかかった未利用魚を福田海産（宇賀浦町、福田久美子社長）が一次加工し、エビスパック（昭和３、対馬正樹社長）がいかめし製造のレトルト技術を活用し、焼き魚や煮付けに仕上げる。

　「いきなり（大量に）獲れたり獲れなくなったりする未利用魚は、ラベルが余る、注文が来ても作れないというリスクが高い」（川崎さん）。プロジェクトでは原料の安定供給、製造、出荷を求めるメーカー側のリスクを逆手にとり、どんな魚がいつ水揚げされても迅速かつ臨機応変に対応できるよう、商品ラベルを「未利用魚介プロジェクト」に統一する。坂口包装資材（北斗市追分３、石山仁志社長）が協力する。

　商品の第１弾は、タナゴの煮付け（参考価格４５０円）、ガヤ（エゾメバル）の煮付け（同４１０円）、サバの塩焼き（同）の３種類。ＥＧＡＯが開発した、函館産マコンブを使っただし調味料「極ＵＭＡＭＩ美人」で味付けして魚の臭みを抜き、骨まで食べられるようにしたほか、常温で１８０日保存できる。湯せんや電子レンジで加熱するか、そのままでも食べられる。１８日から新商品「こもちだいの美人焼き」「こもちニシンの美人煮つけ」を発売する。

　熊木さんは「漁師が自ら６次産業化するのは難しいが、個々の得意分野で手を取り合って人と人をつないで笑顔になれる、函館ならではの取り組みになる」と話す。多世代で魚離れが進む中、地産地消や“海のまち”の食育活動にも結び付くと強調する。

　川崎さんは「取引してもらえない魚の価値基準を上げることが一番だが、食べる機会を作らなければ難しい。どうすれば（消費者に）食べてもらえるかがこれからの課題」とする。今後は未利用魚の認知度アップと市場で一般に取引されることを目指すとともに、販路拡大、水産業の支援にも取り組む考えだ。

　商品は福田海産、セブンイレブン函館五稜郭公園前店（五稜郭町）などで購入できるほか、１２日から２５日まで丸井今井函館店（本町）でも販売ブースを設ける。