脳動脈瘤の最先端治療法導入 王子総合病院の本間医師
王子総合病院(苫小牧市若草町)の脳神経外科主任科長・本間敏美さん(50)が、脳動脈瘤の最先端治療法を胆振・日高地域で初めて取り入れた。「フローダイバーター(FD)」という柔軟性の高い金網状のステント(筒)を血管内に入れる手法で、発症箇所への血液流入を阻止し、血栓化を促すことで破裂を防ぐ。手術時間の大幅な短縮が可能で、本間さんは「患者の体への負担も軽減できる」とアピールしている。
FD治療は南米や欧米などが先行している治療術で、日本では2015年にメドトロニック(本社アイルランド)製の「パイプライン」を皮切りに、現在3種類が薬事承認されている。これまでは動脈瘤内に金属製コイルを詰める「コイル塞栓術」が主流だが、再発率が高く、大きな動脈瘤ほど完全治療は困難。FD治療は手術時間が約半分といい、血栓化で破裂リスクを低減するため、従来施術では対応が困難な症例ほど効果を発揮するという。
本間さんは桧山管内江差町出身。王子には「高度な医療を地方の病院でも実践したい」と13年4月に赴任。脳神経外科学会など各学会専門医や日本神経内視鏡学会の技術認定医になるなど研さんに励んでおり、「FD治療は以前から注目していた」と振り返る。
手術事例が多いメドトロニック製パイプラインを使ったFD治療を導入しようと、21年から同治療に精通した外部医師立ち会いの下、直径10ミリ以上の脳動脈瘤手術実積を積み上げてきた。今年4月に単独でFD治療を行える認定を受けた。
これまでFD治療が有効と思われる患者には、札幌や函館の医療機関をあっせんしてきたが、既に手術11例の実績を重ねており、本間さんは「地域内で医療が完結できる確率が上がった」と強調する。
FD治療は現在2種類の動脈部位で病状が比較的安定している慢性期の限定だが、「応用範囲は広がる可能性を秘めている」と期待。自身は東胆振の地域医療を支えるようになって10年の節目でもあり「今後は後進の育成にも力を入れたい」と意気込んでいる。
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