苫小牧市在住の４０代男性事業主でつくるバンド「ＴＨＥ　ＦＬＥＡ　ＭＡＲＫＥＴＳ（ザ・フリーマーケッツ）」が、１９９０年代にＪＲ苫小牧駅北口前にあった屋内型遊園地を題材にした新曲「ＦＡＮＴＡＳＹ　ＤＯＭＥ（ファンタジードーム）」とミュージックビデオ（ＭＶ）を完成させた。ファンタジードーム営業当時の写真をふんだんに用いたＭＶが先月中旬から動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開され、「郷愁を誘う」などと静かな話題を呼んでいる。

ファンタジードームを作詞、作曲した杉村さん。後方のポスターにザ・フリーマーケッツのメンバーの顔写真が並ぶ

　１９９０年に国内初の全天候型遊園地としてオープンしたファンタジードーム。苫小牧駅北口直結で、一瞬だけ外にせり出すジェットコースターなど多彩な遊戯施設が注目を集めたが、客足は持続せず９７年１月に閉鎖された。現在、跡地ではＭＥＧＡドン・キホーテ苫小牧店（木場町）が営業し、建物の外観に面影が残る。

　「この街には夢の国があったんだ」「その名残りだけが佇（たたず）んでいる」―。ＭＶはスーツ姿の男性５人が歌ったり、ギターやドラムなどを演奏したりする姿がメインだがアップテンポな曲に乗せてファンタジードームの多彩な施設や当時のポスター、チラシなどの写真を流す。歌詞や最近の街並みの写真も絡めた演出から活気にあふれた時代を思い、衰退にあらがいたい気持ちがにじむ。ファンタジードームの写真は、市立中央図書館などから借り受けたという。

　フリーマーケッツは▽葛西賢治さん（４２）＝ボーカル＝、杉村原生さん（４５）＝ギター＝、坂井学さん（４６）＝ベース＝、大西奏介さん（４０）＝ドラム＝、梶川弘樹さん（４３）＝サウンドプログラマー＝の５人組。ライブハウス経営、看板製作、空調メンテナンスなど業種の異なる事業主で２０１６年に結成。かつて苫小牧青年会議所（ＪＣ）で共に活動した面々だ。作詞、作曲を手掛けた杉村さんは「駅前に活気があった時代を知っている世代だから、あの熱気をなんとか残せないか―という思いで臨んだ。いろいろと言われるが、真面目に作っている」と話す。

　オリジナル曲としては昨年８月に発表した「ＯＮＥ　ＡＣＴ　ＦＯＲ」に次ぐ２作目。いずれもＭＶを作り、ユーチューブで公開している。６月１６日公開のファンタジードームの視聴回数は同３０日時点で８２００回を突破。１作目の５０倍以上の視聴回数で「楽しかったあの時代が蘇（よみがえ）ってくるようでした」「私ファンタジードームで働いていました。懐かし過ぎてちょっと泣けました」といったコメントが寄せられ、杉村さんは「ライブでも反応は良い」と手応えを語る。

　バンド活動の収益で暖房設備を購入し、市社会福祉協議会に寄贈するなど地域貢献にも取り組むフリーマーケッツ。８月公開を目指して３作目を制作中で、杉村さんは「地域に活力を注ぐバンドでありたい」と力を込める。