釧路市愛国東在住の高下節男さん（８４）は樺太で生まれ、幼少期を樺太で過ごした。同地の小学校でたたき込まれたのが「教育勅語」。自宅から、知人から譲り受けた大勲位伯爵東郷平八郎が毛筆でしたためた「教育勅語」（大正５年１月揮（き）毫（ごう））が眠っていたのが見つかった。

　戦前、戦中、小学校の敷地内には天皇と皇后の写真（御真影）と教育勅語を納めた奉安殿が校舎内、あるいは校舎外に設けられていた。戦後、連合国軍総司令部（ＧＨＱ）による神道指令のため奉安殿は廃止されたが、別海町の旧柏野尋常小学校（別海町西春別１０５番地）に設置された奉安殿は、「戦前の小学校で実施されていた教育を物語る重要な歴史遺産」として２０１３年、町指定文化財に登録された。

　高下さんが、この東郷平八郎の「教育勅語」を譲り受けたのは１５年も前のこと。「自宅にあるはず」と探し出すきっかけとなったのは、教育勅語について書かれた新聞の特集記事だった。「学校の先生が書いた上下連載の記事だった。樺太で小学校１年の時に毎朝、教育勅語を声に出して読まされたのを思い出した。天皇と国家への忠誠心が教育の目的であるとうたった教育勅語、その権威は絶対的なもの。それが敗戦と同時に隠すようになった」と感慨深げに話す。

　見つかった「教育勅語」は印刷されたものと見られるが、裏打ちされた和紙に貼られた書には東郷の落款も押印されている。高下さんは「私が持っているより、教育委員会や博物館など、しかるべき機関で保管してもらえればと思っている」と話している。高下さんへの連絡は０１５４（３６）１４２５へ。

東郷平八郎が揮毫した「教育勅語」を手にする高下さん