故石川さんシベリア抑留の記憶、朗読音楽会で伝承【七飯】
【七飯】七飯男爵太鼓創作会(高橋理沙会長)は6日、函館で絵画教室を主宰した故石川慎三さん(1919~2015年)が描いたシベリア抑留経験の絵画群に着想を得た朗読音楽会「絵と和太鼓と朗読『記憶の足音』~石川慎三・シベリア抑留を描く~」の初演公演を七飯町文化センターで開いた。石川さんが残した戦争の理不尽さ、平和への思いを演奏に乗せて来場者と共有。失われつつある戦争の経験を後世へとつなぐ新しい形の公演が第一歩を刻んだ。
石川さんは45年8月の終戦直後、千島北端の占守(シュムシュ)島で旧ソ連軍の捕虜となり、49年12月の帰国まで収容所生活を送った。38年に軍属となってから10年以上、軍隊と戦争に翻弄された20代を過ごした。復員後は造船会社に勤め、退職後に始めた絵画教室は86歳まで続けた。90歳を目前にした2008年ごろから、戦争や抑留生活をテーマとして、火線飛び交う戦場、極寒下での貨車からの荷下ろし、凍土を掘っての埋葬の様子など11枚の作品を残し、09年春に発表した。
終戦から75年となった20年夏に函館YWCAが函館市内で石川さんの絵画展を開催。作品の思いに触れた高橋会長や脚本・作曲を担った宮城県美里町の邦洋楽作曲家、佐藤三昭さんらによって朗読音楽会の企画が始まった。公演では朗読を佐藤さん、演奏を男爵太鼓の高橋さん、小川香織さん、石川由佳さん、若狭恵子さんが担当。昼夜2回公演が行われた。
書き下ろしの楽曲は5曲で、戦場の過酷さを伝える和太鼓、哀愁を漂わせる笛の音が響き、スクリーンには絵が投影された。慎三さんの回顧録や短歌を交えて語られる望郷の念や仲間の死。「あなたたちが悪いのではない。戦争を起こした国が悪い」と食料を分かち合ってくれたロシア人老婆の優しさは言語や立場を超えて人が分かり合えることを示した。「次の世代に絶対戦争の経験をさせてはならないと、反戦平和を希求してやまない」と慎三さんの強い思いも語られた。
会場には慎三さんの妻、和加子さん(95)=函館市=も来場。「こんな絵だったのかと違った思いで見せてもらいました。お父ちゃんは幸せものだと思います。良かったねと声を掛けたい」と涙を見せた。東京から夫婦で来場した次女の牧子さん(64)は「反戦、平和の思いが第一ですが、その中に人の温かさや人の心を忘れないで父はシベリアから帰ってきてくれた。悲惨さや残酷さだけで終わらせたくない思いがあったと思います」と話していた。
佐藤さんは「学び、感じてきた思いや心の音を出してくれた。慎三さんの思いを受け継ぎ、継続して伝えていかなくてはならない」と話し、道南のみならず東北での公演も計画していく考えを示した。
関連記事
遺愛学院本館、生徒がご案内 初の一般公開【函館】
遺愛学院(函館市杉並町、福島基輝理事長)は23日、国指定重要文化財「遺愛学院本館(旧遺愛女学校本館)」の保存改修工事がおおむね終わったことから、初めて一般公開した。遺愛高生の有志11人がコンシ...
GLAYのマンホール 排水設備指定業者組合が市に寄贈 尾田栄一郎さんがイ..
函館市排水設備指定業者協同組合(加盟23社、木村謙一理事長)は22日、設立50周年を記念し、函館出身のロックバンド、GLAYのメンバーのイラストが描かれた「GLAY函館マンホール」8組を函館市...
アイヌ文化の魅力発信 「アートウィーク」開幕【釧路市】
釧路市阿寒湖のアイヌ文化から着想を得たさまざまなジャンルの芸術作品を、阿寒湖温泉街を巡りながら鑑賞する「阿寒アイヌアートウィーク2024」(釧路市主催)が、23日から始まった。阿寒湖アイヌコタ...
防災士目指し研修 養成講座、小学3年も挑戦【根室】
【根室】市防災士養成研修講座が、市総合文化会館を会場に23、24日の日程で始まった。札幌市以外での講座は、今年6月の釧路市に次ぐ道内2例目となる。参加者は小学3年生~78歳代までの91人で、う...
ポイ捨てゼロ願う ごみ拾い“袋文字” SNSで発信「皆さん考えて」【帯広】
帯広市西9南1の加藤芳規さん(82)は8年前から毎日、近所のごみ拾いを続け、ごみ拾いSNS「ピリカ」に、2週間分のごみを集めた袋で作る文字アートの写真を投稿している。これまで「ポ・イ・ス・テ」な...
CATEGORY記事カテゴリー
MEDIA参加新聞社
ARCHIVE月別記事リスト
RANKINGアクセスランキング
- 週間アクセス
- 月間アクセス
-
1
函館市動物愛護管理センター開所 25日から運用 殺処分減へ【函館】
2道東道阿寒─釧路西 12月22日開通 札幌─釧路市街地直結【釧路市】
3昔風の純喫茶復活 マリー・ギャルソン17日営業再開【釧路市】
4トラウトサーモン安定的生産に期待込め 浦河港内で養殖試験 浦河町栽培漁業研究会 事業化に向け可能性探る【浦河】
5帯広畜大「ゼニ研」に前田一歩園賞 ゼニガタアザラシの個体数調査継続【札幌】
-
1
高校で卒業式、1623人が門出の日【釧路管内】
2タイ国鉄車両工場長 シンハカーンさん キハ183系を見学 安平
3昔風の純喫茶復活 マリー・ギャルソン17日営業再開【釧路市】
4釧路市動物園、ライオンのユウキ死ぬ【釧路】
5旧狩勝牧場再生へCF 返礼はソフト食べ放題やツアー 北広牧場【新得】