米国学者が町で天体観測 「恒星食」狙い10月派遣【陸別】
米国アリゾナ州で100年を超える歴史を持つローウェル天文台の研究者が10月、珍しい天文現象を観測するため、りくべつ宇宙地球科学館・銀河の森天文台(津田浩之館長)を訪れる。口径115センチと国内最大級の反射望遠鏡「りくり」を持つ銀河の森天文台の設備と観測環境が適しているため、米国側から提案があった。津田館長は「光栄なこと。ぜひ成功させてほしい。コロナ禍で不透明だが、地域と触れ合える機会も計画しているようだ」と喜んでいる。
国内最大級望遠鏡や環境着目
海王星の衛星トリトンが、トリトンよりも明るい恒星の前を通過する天体現象(恒星食)を観測する。トリトンには大気があることが分かっているが、探査機を送る以外の方法で研究を進めるには、恒星食の観測が最も適しているという。
1990年代から2001年にかけて行われた研究ではトリトンの大気圧は上昇し、直近の17年の観測では低下していた。大気の進化を理解できるほどの測定はできておらず、次の恒星食は26年まで予測されていないため、ローウェル天文台では今回の観測を重要視している。津田館長は「日本国内での観測例は聞いたことがない」と話す。
同天文台は1894年設立。1930年に冥王星を発見した歴史を持つ。米航空宇宙局(NASA)から資金援助を受けてトリトンの研究を行っている。陸別へはアマンダ・ボッシュ博士とステファン・レヴィン博士の2人の派遣を予定している。10月4日に陸別入りし、6日夜に観測する予定。国内では東北の1カ所で観測計画が進んでいる。
ローウェルとメールでやり取りをしていた銀河の森天文台の中島克仁主査は「陸別でも観測しようと考えていた。難しい取り組みになると思うが、楽しみにしている」と期待している。
陸別町は長年、天文関係を町づくりの柱として育ててきた。野尻秀隆町長は「有名な学者が陸別に着目してくれた。名誉なこと。地味だが中身はすごい。世界へのアピールになれば」と歓迎している。
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