100年前のエンジン復活 オールドトラクター修理【音更】
音更町万年基線28の元農業茂古沼一(くに)さん(83)は、業界で知られたトラクター修理の達人。型式の古いオールドトラクターの依頼が十勝管内外から寄せられ、これまでに1000台以上を直した。9月も約100年前の英国製トラクターの修理が舞い込み、エンジンがかかるまでに復活させた。
茂古沼さんは、1級農業機械士の資格を持ち、オールドトラクター保存会の会長も務めている。自身も古い型式のトラクターを20台以上所有している。「エンジンがかからなければトラクターとは言わない。トラクターは動いてこそ」が持論で、これまでにもオールドトラクターの修理依頼が各地から寄せられており、ボランティアで応じている。
9月下旬には、上川管内上富良野町にある土の博物館「土の館」から、展示保存している旧フォードソン社製のF型トラクターの依頼があった。3年前にも修理した車両だが、エンジンが動かなくなったという。自前のトラックで同館まで取りに行き、自宅で修理した。
約100年前に製造されたF型トラクターは、鉄車輪で、燃料タンクは二つ付いている。ガソリンでエンジンを温め、動かす時は主燃料の灯油にスイッチで切り替える。前回の修理では、もともと付いていなかったキャブレターを新たに作って取り付けるなどし、ガソリンだけで動くように改造した。
現在は製造元がなく、当時と同じ部品を入手することはできない。動かすためには必要な部品を自分で考え、業者に発注して取り付けている。今回も故障箇所を見つけて、燃料ポンプなどを自分で設計し、業者に作ってもらった。
依頼があってから10日ほどで修理を終え、1日にエンジンをかけると、「ブォォーッ」と年代を感じさせる大きく重い音が響いた。「一発でエンジンがかかったのには驚いた。最高に調子がいい」と茂古沼さん。トラクターはあと数日間、エンジンをかけて試運転し、来週中に同館に引き渡す。
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