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網走タイムズ

建設予定地から大量の産廃 広域廃棄物中間処理施設 整備計画が暗礁に乗り上げる【東オホーツク】

広域廃棄物中間処理施設の建設予定地

 網走市を中心とする1市5町で進めている「広域廃棄物中間処理施設」の整備事業が暗礁に乗り上げた。大空町東藻琴にある建設予定地で、大量の産業廃棄物が見つかったため。廃棄物処理には時間がかかり、別候補地の選定にも住民合意を得る必要がある。関係自治体は早期の対応方針の決定に迫られている。

 ごみ処理の広域化計画は、複数自治体のごみ処理施設を1つの施設に集約し、共同で処理するもの。建設費や維持管理費の削減、ごみ処理のエネルギー回収の効率的な2次利用の可能性拡大などのメリットがある。

 また、人口減少や自治体財政のひっ迫、廃棄物処理に関係する働き手不足などに対しても効率的であることから、全国的に広域処理が進んでいる。

どの自治体も〝待ったなし〟

 東オホーツク地域の広域処理は網走市、美幌町、斜里町、小清水町、大空町、清里町の1市5町が廃棄物処理広域化推進室(事務局・網走市)を設置し、計画を進めている。

 小清水町(1月末住基人口4406人)や美幌町(同1万7785人)、斜里町(同1万672人)は、現在使用している処理施設の老朽化、処分場のひっ迫度が深刻で〝パンク寸前〟の状態にある。

 清里町(同3709人)は1月、約40年前に整備した焼却施設の不具合により、排出ガスに基準値を上回るダイオキシンが検出され、稼働を停止しており、半年以上、各世帯などから回収したごみを堆積している状態。

 網走市(同3万2774人)も埋め立て処分場の延命が不可欠な状態にあり、焼却による大幅なごみの減量が必須となるなど、1市5町はごみ処理に関する共通の課題を抱えている。

計画は順調…のはずが

 計画では、広域(共同)で不燃物を除く埋め立て・粗大ごみ、紙おむつ、生ごみを処理する焼却処理施設と生ごみメタン発酵施設を建設する。

 1市5町は、12月議会に一部事務組合設立に関する議案を提案した後、1月に道へ設立許可申請。来年6月には工事を発注し、26年度から3カ年計画で建設工事に着手。29年度には施設を稼働し、ごみの受け入れ、処理を開始する予定だった。

 施設整備費は110億円から165億円を見込み、宅盤造営費などで14億4千万円から21億7千万円の経費が必要としている。

 議論の核の1つとなっていた建設予定地は大空町東藻琴末広629番に所在する大空町有地約1万3千平方㍍を使用することで、計画を着々と進めていた。

 だが、施設構想や建設地、事業予算などを固め、事業の実質スタートを目前に控えた今年7月、建設予定地の地質調査を実施したとこと、予定地が30年ほど前に沢地を埋め立てた「盛り土」であることが判明した。

 さらに、土中からビニール片やコンクリートの破片などの廃棄物が見つかった。

 自然由来の地盤でない盛り土は、簡単にいうと柔らかく、大きな構造物を建設する地盤に適さない。

 網走市内でも市が造成した盛り土の住宅地で、建設後に住宅が傾くなどの事態を招いた潮見住宅問題なども起きている。

盛り土対策、さらに廃棄物も

 28人が死亡、一般住宅など136棟が被害を受けた静岡県熱海市伊豆山土石流災害(21年7月発生)の原因も違法な盛り土に起因したとされた。

 国は盛り土災害による事態を重くみて「盛土等防災マニュアル」を策定し、土地の用途にかかわらず、危険な盛り土を全国一律の基準で規制している。

 本処理施設の建設予定地は、国が定める地震時の安定率1・0を下回る0・73となり、常時は安全率1・5を下回る1・06だった。

 このため、現在の予定地は〝このまま〟では使用できないことが明らかになり、大規模な対策工法の施工が必要となった。

 また、廃棄物が見つかった問題に関しては、状況を確認するため11月11日、敷地内8カ所でショベルカーによる試験掘削を行ったところ、8カ所すべてで廃棄物が見つかった。

 見つかったのはコンクリート破片や木材のほか、ビニール片や繊維マット、ブルーシート、割れた陶磁器、塩化ビニール管、空き缶など、多種多様な廃棄物だった。

 このため、土地を所有する大空町は、共に広域処理を進める1市4町に対し、状況を説明し、謝罪。最終調整を行う予定だった首長によるトップ会議も流会し、計画は暗礁に乗り上げた。

大空町の対応待ちだが

 大空町は道に町有地から廃棄物が見つかった事実を報告し、指導通知待ちの状態にある。

 試験掘削の結果などから必然的に、盛り土をすべて掘り起こし、廃棄物を土の分別処理を行うことになるとみられており、同様の処理事業から推計すると早くても処理に2年はかかるとみられている。

 建設予定地は、廃棄物の処理を行い〝清浄な地面〟になったとしても、地盤としての強度問題は解決せず、対策工法には多額の予算が必要となることから〝この場所〟を使うことは極めて難しい。

 今後は、予定していた入札は中止し、一部事務組合の設置も見送るなど、整備スケジュールは大幅にずれ込んだ。

 1市5町の協議会は、現在の問題に関して大空町が対応を持ち帰っていることから、返答を受けてから現計画地で事業を進めるのか、別の建設地を選定するのか、具体的な検討を開始する。

 関係者は「今の場所で事業を進めるのは現実的ではないが、具体的な代替地があるわけではない。場所が見つかったとしても住民合意の形成や新たな事業計画の策定など、計画は大きくずれ込む。この間、現在使用している処理施設が限界に達する自治体も出るだろう。問題は極めて深刻」と頭を抱えている。

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