慰霊祭で追悼の言葉を述べる浅利代表

　１９４５（昭和２０）年７月１４、１５日の函館空襲の犠牲者の追悼慰霊法要が１４日、函館市船見町の称名寺（河本悠大住職）で開かれた。函館空襲を記録する会（浅利政俊代表）の主催。昨年の海底調査で恵山岬沖に沈んでいることを確かめた米海軍潜水艦アルバコアの乗組員８５人を初めて追悼。日米双方の戦没者をしのんだ。

　同会は８９年に慰霊碑を建立し、空襲時に撃墜された米兵も合わせ追悼してきた。３５回目となる慰霊祭は本堂で営まれ、参列した約３０人が焼香。浅利代表は７月に市内２中学校で授業を行い、生徒の感想も披露したほか、アルバコア乗組員のため賛美歌も歌った。浅利代表は「戦争を回避する心を育てることが平和への道しるべだ」と力を込めた。

　初めて参列した函館市湯川町１の江成洋子さん（８５）は、７歳のときに札幌鉄道郵便局職員だった父、菅武さん（当時４０）を亡くした。札幌から函館に出張中に空襲に遭い、逃げ込んだ函館桟橋近くの防空壕に爆弾が直撃し、同僚ら二十数人と犠牲になった。江成さんは「玄関先で『いってらっしゃい』と送り出したことを覚えている。慰霊碑に父の名前も彫られており、胸がいっぱい」と話していた。

　４５年７月の函館空襲は、道内各地に対する米空母群艦載機を中心とした攻撃の一部。津軽海峡では石炭輸送路を断つため青函連絡船１２隻が壊滅。函館湾内では駆逐艦「橘」が撃沈し、１４０人が戦死した。北海道空襲犠牲者名簿（２０１１年、山本竜也著）によると、全道で２９００人以上、連絡船で４３０人、函館の陸上部で１０３人が亡くなった。松前から長万部にかけ、渡島の各沿岸部でも犠牲者があり、洋上では多数の船舶が撃沈した。

　一方、米潜水艦アルバコアは、４４（同１９）年１１月に恵山岬沖で触雷で撃沈。浦環東大名誉教授（７５）の研究チームが昨年、海底の位置を特定し、米海軍は２月に調査結果を追認した。同艦のヒュー・レイナー・リマー艦長（享年３０）は、４４年５月に副長として乗艦した潜水艦トートグでの任務中、恵山岬沖で鋼材運搬船の宮崎丸を撃沈した記録がある。浅利代表の調査によると、宮崎丸では少なくとも２９人が死亡している。