丸木舟製作で儀式 阿寒アイヌ工芸協同組合【釧路市】
阿寒アイヌ工芸協同組合(西田正男理事長)は15日、国の交付金を活用した釧路市の事業で製作した丸木舟(チプ)の安全や豊漁などを祈願する「舟おろしの儀式(チプサンケ)」を、釧路市阿寒湖温泉の阿寒観光汽船船揚げ場で、約20年ぶりに実施した。
同事業は、市の2021年度の取り組みで、アイヌ民族の優れた工芸技術を後継者に伝承することなどを目的に、国のアイヌ施策推進交付金を活用し、同組合に委託したもの。事業費は6160万円。「まりも祭り」などで使用している丸木舟が前回の製作から23年経過しており、老朽化しているため更新することとした。
新しい丸木舟の材料となった木は、根釧西部森林管理署が管理する弟子屈町奥春別の国有林にあったカツラ。高さ24㍍、直径約1㍍の大木を、21年7月に切り出し阿寒湖温泉街に運搬。その後、阿寒湖アイヌコタンの若手ら約10人が、同組合の床州生さんの指導を受け製作を開始。彫刻刀などで木を削り、アイヌ文様なども記した全長約5㍍、幅約1㍍の丸木舟を約半年かけ、22年3月に完成させた。完成後すぐに儀式を行う予定だったが、コロナ禍や天候不順のため延期していた。
この日の儀式には約30人が参加。西田理事長が祭主となり、アイヌ民族の伝統儀式である「カムイノミ」で安全を祈願した後、舟おろしが行われた。西田理事長は「無事に舟が完成し、着水も問題なかったことで安心した。今後もこういった伝統技術などを継承していきたい」と話していた。
製作した丸木舟は、市アイヌ文化伝承創造館「オンネチセ」で古い丸木舟とともに展示するほか、まりも祭りなどで活用する予定。
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