斜里町役場での献花台に多くの人が訪れ、祈りをささげた

　知床半島沖で小型観光船「ＫＡＺＵ　Ｉ（カズワン）」が沈没した事故から23日で１年を迎えた。斜里町では同日、追悼式が行われ、網走では遺族らが船体に献花を捧げた。乗客乗員20人が死亡、依然として６人が行方不明となっている。

　追悼式はウトロ地区の高台にあるホテルで行われ、乗客家族79人をはじめ、鈴木直道知事や斉藤鉄夫国土交通大臣ら計１３３人が出席した。

　主催者を代表し、馬場隆町長が「安心して訪れてもらえる知床であるために行動し続けることが私たちの使命。決して忘れません」と式辞を述べた。

　斉藤大臣は「監査や検査を行いながら、このような事故を防ぐことができなかったこと、また、１人も救助できていないことについて、大変重く、真摯に受け止めている」と述べた。

　その上で「痛ましい事故を２度と起こさないという強い決意のもと、不退転の覚悟を持って、事故の再発防止に取り組む」と誓った。

　参列者は、黙とうに続いて、白を基調とした祭壇に、白いカーネーションを１輪ずつ手向け、手を合わせた。

　追悼式には運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長は姿を見せなかったが、花輪を献花していた。

　追悼式の後、地元観光関係者が「知床観光の安全を誓う集い」を開いた。

　午後１時過ぎには、１年前にカズワンが出港したウトロ地区のほか、町市街地でも鎮魂のサイレンが鳴らされ、町民らも祈りを捧げた。

　ウトロの道の駅「うとろシリエトク」と、斜里町役場には献花台が設けられ、観光客や町民らが訪れ、花々とともに祈りを捧げた。

　苫小牧市から訪れた男性は「数年前にカズ３に乗ったことがあり、事故は他人事と思えない。この１年『もしも自分だったら』と何度も思った。せめて献花だけでもと思い、居ても立っても居られず、ここに来た」と語った。

　同町の男性は「地元として、この１年、さまざまなことに思いを巡らせた。冷たかっただろう。亡くなった方々のご冥福と、行方不明の方々の早期発見を心から願う」と深々と頭を下げた。

　事故後、１年間で献花に訪れた観光客や関係者、町民らは約２４００組に上るという。

　カズワンが保管されている網走市では、約20人の乗客家族が〝あの日〟海に出たカズワンと対面した。

網走港のカズワン一時保管場所で、乗客家族が船体に花を手向けた

　バスで一時保管場所を訪れた乗客家族は、保管場所の中に入り、船体を間近で見た後、白い花束を捧げた。

　事故後１年の節目となったこの日は、ちょうど１年前と同じように波風や強く、沖合は白波が見えた。

　事故に合わせてウトロを訪れていた家族は「自分たちが想像できないくらい苦しく、悔しく、つらい思いをしたのだろう。荒れている海を見ると涙があふれてくる」と海面を見つめ、目頭を押さえていた。

　海上保安庁や道警は22―24日の３日間、事故の行方不明者や遺留品などを探す集中捜索を実施した。

　海保は、桂田社長を業務上過失致死容疑での立件に向け、捜査を続けている。