定年を迎え引退したホビットと田畑さん

　道内唯一の介助犬として田畑つかささん（３１）＝函館市千代台町＝の生活を支えてきたホビット（雄１１歳）が２８日、定年を迎え引退した。田畑さんは「余生を穏やかに過ごしてほしい」と感謝している。

　病気の影響で車いす生活を送る田畑さんは２０１３年、介助犬を無償貸与する社会福祉法人「日本介助犬協会」（横浜市）に申請。認定試験に合格し１４年２月からホビットをパートナーに迎えた。

　ホビットはラブラトールレトリバーとゴールデンレトリバーを親に持つ。主な役目は靴を脱がすことやドアの開け閉め、手が届かない所にある物を取ってくるなど田畑さんの手足の代わりとなって介助。職場の仕事や外出時にも常に付き添い、約８年にわたり田畑さんの生活を支えてきた。

　ホビットをパートナーに迎え、「気持ちが前向きになり、人生が変わった」と話す田畑さん。特に印象深いのは、ホビットを迎えて１カ月後に東京のイベントに参加した時で、「ホビットと初めての旅行チャレンジで不安だったけど無事に最後までやり遂げた。ホビットとやっていけると自信になった」と振り返る。

　介助犬の定年は１１歳の誕生日を目安としており、ホビットは今月９日で１１歳となり、協会と相談した結果、２８日付で引退と決まった。引退後は家庭犬として田畑さん宅で余生を過ごし、田畑さん自身も新たな介助犬を持たない考え。

　２８日は協会の担当者が田畑さん宅を訪れ、引退の手続きをした。「一緒に外出できないのは少し寂しい思いもあるが、これまでの経験を糧に自立した生活を送っていきたい」と決意を見せる田畑さん。ホビットの引退で道内の介助犬ユーザーはゼロとなるが、「介助犬を利用したいと考えている人がいれば自分の経験を伝え、普及に協力したい」と話している。