試食の感想をライブ配信で視聴者に伝え、商品を売り込むダニエルさん（右）とエダさん

　道内７空港を運営する北海道エアポート（ＨＡＰ、千歳市）は、１１月下旬にシンガポールのインフルエンサーを道南、札幌に招き、現地の消費者に道産食品を売り込む「ライブコマース」を実施した。函館市内では五稜郭タワーや函館朝市といった観光地を訪れ、食のＰＲと共に観光の魅力を発信し、さらなるインバウンド需要の喚起も図った。

　ライブコマースはＳＮＳのライブ配信機能を活用した商品販売手法。ライバーと呼ばれる配信者が商品を紹介し、チャット機能を通じて視聴者からリアルタイムで注文を受け付ける。９月の道東開催に続いて今回が２回目。ＨＡＰと道経済産業局の共催で実施した。　

　シンガポールは多民族国家で国民一人当たりの所得水準が高く、食品の輸入規制が少ないことなどから海外でのテストマーケティングに有効な国とされる。また、北海道はシンガポール国民が日本旅行の際に訪れたい地域として人気で道内への誘客を図るのも狙い。

　配信はエダさんとダニエルさんの男女２人のライバーチーム「レディーズファースト」が担当。日常的にアジアやヨーロッパに出向き、フェイスブックのライブ配信で各地のさまざまな商品を販売。複数のアカウントを運用し、シンガポールを中心としたフォロワーは４万人を超える。

　２２～２４の３日間招いた。２２日は五稜郭タワーや函館山のほか、菓子・総菜製造、販売のカドウフーズ、函館国際ホテルを訪問。２３日は午前に函館朝市、午後に七飯の函館大沼鶴雅リゾートエプイを訪れた。

　函館朝市では配信を通じ、店内の魅力を紹介。エダさんがイカ釣りに挑戦し、函館名物をシンガポールに発信した。来馬商店では刺身用ホタテや根ボッケ、ズワイガニ、スモークサーモンといった海産物がずらりと並び、ライバーの２人が試食。味の感想や調理方法など視聴者に伝えると、チャット上には商品への注文が殺到した。函館カネニの「かにまん」も試食して配信でＰＲし、視聴者から好感触を得ていた。

　配信の様子は録画映像を残し、商品の注文を受け付けた。注文情報を取りまとめた後、１２月中旬に新千歳空港からシンガポールに航空便で輸出する。ダニエルさんは「北海道の食はクオリティーが高く、ほかとは違う。世界中の人が来て楽しめる食文化で魅力的」、エダさんは「シンガポールの人は日本が大好き。まだまだ北海道といえば札幌のイメージが強く、配信で函館の魅力を発信できた」と笑顔で話した。

　ＨＡＰは来年度以降も道内でのライブコマースを継続し、道産食品の購買促進に注力する。営業開発本部貨物営業課のバン・サンヒョク係長は「テレビショッピングのような一方的な発信とは違い、チャット機能で視聴者とリアルタイムでやり取りできる良さがある。購買や旅行意欲の向上につなげていきたい」と話した。