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十勝毎日新聞

武四郎に学ぶ「真実見抜く目」 記念館館長・山本命さん【十勝】

 幕末に調査で計6回蝦夷地を歩き、「北海道」の名付け親にもなった探検家松浦武四郎。十勝にも2度訪れ、その土地の姿をスケッチとともに書き残している。武四郎が見た十勝の姿や、今を生きる人々が学ぶべきことを、20日に来勝した松浦武四郎記念館(三重県松阪市)の山本命館長に聞いた。

予見した十勝の姿
 -武四郎には十勝はどのように映っていたか。

 武四郎はただ歩くだけではなく、その地がどういう所なのかを見て、どう発展していくのかを考えていた。記録によると、帯広は「肥沃(ひよく)な大地」で、ここが物資の集積地になると和歌で詠んでいる。

 今振り返ると確かにそのように発展している。武四郎が予言したのか、それを意識して開発したのかは分からないが、「十勝日誌」に書かれた姿に今の帯広は非常に近い。「この辺を切り開いて、作物を育てて、ちゃんと輸送ルートも作り、物資の集積地になるならそれは良いことだ」と考えていた発想がすごい。

 -2018年に帯広美術館で開かれた特別巡回展「幕末維新を生きた旅の巨人 松浦武四郎」から5年。新たな発見は。
 コロナ禍で調査に行くことが難しい時期だったが、館内の資料を調べ、改めて本を読み返す時間になった。そこで見えてきたのは、幕末の志士に大きな役割を果たした部分。坂本龍馬が抱いた蝦夷地開拓の構想など、当時の人に影響を与えたように見える。武四郎の人生は、28歳から41歳までの北海道調査だけではなく、71歳までずっと続いている。その中で幕末という時代をどう生きてどんな役割を果たしたのか、改めて少しずつ見えてきた。

多様な文化尊重
 -武四郎から今学ぶべきことは。

 武四郎には「さまざまな価値観を受け入れる広い心」「偏見を持たない目」「どんな困難でも先を切り開く力」があった。一番は違いを受け入れること。肌の色や宗教などいろんな違いを持った人が今も社会で暮らしている。それを受け入れられないため戦争が起きて命が失われている。価値観の違いによる排除があっては、みんなが仲良く暮らす社会にはならない。武四郎のようにその土地の言葉や文化を持った人たちを受け入れ尊重することが必要。

 また、情報が入ってこない江戸時代では多くの人がうわさに振り回されていただろうが、武四郎は現場に足を運び自分の目で確かめた。今は逆に情報があふれかえった社会。本当かどうか分からない情報の中で真実を見抜く目が今の私たちに求められている。武四郎の生き方が今の私たちへのメッセージになっている。

<やまもと・めい>
 1976年大阪府生まれ。奈良大文化財学科卒業後、三重大学大学院人文社会学研究科へ進み、2001年に中退。同年4月に松浦武四郎記念館学芸員となる。22年に館長。著書に「北海道の名付け親松浦武四郎-アイヌ民族と交流した伊勢人の生涯」(伊勢の國・松坂十樂)など。

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