開発、ドリカム命名に立役者 ワイン用ブドウ「銀河」「未来」新品種登録【池田】
池田町独自のワイン醸造用ブドウで、農林水産省に新たに品種登録された赤ワイン用の「未来」と白ワイン用の「銀河」。陰の立役者として、町ブドウ・ブドウ酒研究所製造課の東億(はかる)研究開発係長(50)の存在がある。新品種が誕生するまでの地道な育種だけでなく、地元出身の有名アーティストに名前を命名してもらうアイデアも光った。
東さんは三笠市出身で、実家が園芸作物を栽培する農家。道立農業大学校(本別町)の畑作園芸経営学科で学んだ後、同研究所栽培管理係の職員募集の案内を目にしたことをきっかけに、1992年にブドウ栽培の道に進んだ。
夏場は外仕事がほとんどで、池田高校北側の畑とワイン城近くの農業技術研究所東側にある畑を行き来し、耐寒性や耐病性などに優れた品種を生み出すための栽培を繰り返す日々。翌93年に「銀河」のルーツとなる第1世代の交配、94年には「未来」の第1世代の交配が始まり、研究に携わった。
ただ、品種開発の成果が形となるまでの時間と労力は計り知れず、今回は待望の白品種の国内品種登録とあって感動もひとしお。その苦労は交配品種(IK)の番号からも読み取れる。これは交配種の苗木を定植するときに与えられるデータベースのようなもので、「山幸」の場合だと「IK-3197」。「未来」はこの山幸と母系の「清見」の特徴を継いだ「IK-667」を掛け合わせて生まれたもので、「IK-14175」。「銀河」は山幸同士を掛け合わせて生まれたもので、「IK-13857」。現在、約2万1700番までその数は増えている。
「先輩方の財産があったからこそ」と語るように、「未来」と「銀河」の育成者の一人で、着任から退任まで品種の改良や開発などに尽力した小木曽秀俊さんら先人たちの存在が大きかった。
東さんは2010年に研究開発係を離れて営業係に異動し、その際に「DREAMS COME TRUE(ドリカム)」のボーカルで池田町出身の吉田美和さんとタイアップした商品開発などを担当。
16年から研究開発係として再び新品種の開発に携わると、18年には営業係で培ったプロモーション能力を発揮することに。「著名な人に品種名を考えてもらうことで知名度が上がるはず」と考え、ドリカムの所属事務所を通じて協力を依頼したところ、吉田さんも快諾。1年後の19年に名前が決まり、それをもって農水省への申請にこぎ着けた。品種名の印象については「未来だけに(吉田さんの)故郷の発展を願う思い、銀河からはキラキラしたイメージを感じた」とする。
今月2日には品種名を記したプレートを自作し、「未来」と「銀河」の幼木が育つワイン城南側の展示園に設置。「赤ワイン用だが、自分にとって思い入れのある二つの品種の登録が次の目標。一つは来年度にも申請したい」と見据え、「自分が栽培に携わってきたブドウが北海道のまちおこしにつながれば」と思い描く。
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