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十勝毎日新聞

62歳ベンチプレス選手・谷口さん 大病とけが克服し全国大会準優勝【帯広】

 ベンチプレス競技の元実業団日本王者・谷口孝仁(たかひと)さん(62)=帯広市、元公務員=が大病、けがを克服して昨年末に競技に復帰、道・東北ブロック大会マスターズ3(60~69歳)66キロ級で道記録122.5キロを樹立、今年1月のジャパンクラシック選手権大会でさらに記録を130キロに伸ばして準優勝を遂げた。谷口さんは「来年は日本一になる。そして日本記録も樹立し、100歳で公式記録100キロを挙げる」と目標を掲げ、シニア選手に適した気功などを取り入れた練習方法と、バナナやごまなど身近な食品などでの栄養補給を実践してパワフルな健康長寿を目指している。自宅のトレーニングルームを訪ねた。

愛犬まめっちゃと一緒に全国大会準優勝の表彰状を笑顔で見せる谷口孝仁さん

 小柄で分厚い胸板の谷口さんが、愛犬のまめっちゃと一緒に笑顔で迎えてくれた。1階のトレーニングルームは計14畳(約22.7平方メートル)の広さ。鉄製のラック、冷蔵庫と流し台、床はゴム製マットが敷かれている。

 「ここで1日に2~4時間、休憩を十分に取りながら1日おきに練習する。60歳を超えると筋力の増加が遅い。疲労回復にも時間がかかる。若いころにはやらなかった体のケアも大切」と説明してくれた。

国税庁勤務時代に実業団の日本王者

 釧路市出身の谷口さんは高校卒業後に国鉄(当時)に入社、帯広駅などで勤め、1986年に試験に合格して国税庁に入庁、本州のほか十勝池田、帯広税務署に勤務した。体力づくりのため通った帯広のJOYFITのジムでベンチプレスを試したところ自分の体重以上の重さが「軽々と挙がった」。2005年の道大会初出場で110キロを挙げて優勝。毎日練習に打ち込み、13年の全日本実業団選手権で大会新の137.5キロで日本王者となった。

 仕事が忙しくなり15年のジャパンクラシック大会3位を最後に競技を引退した。一昨年11月、心臓疾患のため職場で倒れて救急搬送され手術を受けた。集中治療室を出て院内でリハビリの歩行を始めたがコロナ禍のため退院を促され、自宅に戻って屋外散歩中に転倒して右肩を脱臼。職場に復帰したものの、痛みで電話も取れなくなり体力も落ちて昨年1月に退職した。

 心機一転、養生を始めた。「以前から関心を持っていた健康気功を始めた。ユーチューブで一番分かりやすかった中国太極文化学院(東京)にオンライン入門すると、穆子彦(ムーズイイェン)代表が帯広を訪ねてくれた」と気功に打ち込み、帯広の太極拳教室にも通い始めた。

 「体力が回復してきた。そして昨年9月、(胆振管内)洞爺湖町でのベンチプレスのアジア大会に役員の手伝いに行ったら、昔の競技仲間が温かく迎えてくれた。まだ通用するかも」と復帰を決意。練習を再開したが80キロ3回すらも「挙がらなかった」。

気持ちを集中させて自宅でのベンチプレス練習に取り組む谷口孝仁さん

すりごまやクエン酸 牛乳加え栄養補給食

 そこで工夫したのが栄養補給。疲労回復に役立つすりごま5グラムを1日2回、クエン酸同グラムを同数回に分けて、ヨーグルトや牛乳、プルーン、プロテインなどと混ぜて摂取した。バナナや納豆、キムチ、もずく酢、煮干しなども食べる。練習で追い込んでも「次の日に休めば疲れが取れる。シニアになって、病気やけがを抱えていても、まず動くこと。朝、起床したら手の指をもんで、足の指も伸ばして血流を促す。アンチエイジングのための毎日の日課をこなし、100歳の長寿で大会に出て公式記録100キロを挙げるのが最終目標」と力を込めた。

 ベンチプレスは上半身の力だけではない。脚で床を蹴る力のベクトルをバーベル挙上に伝える「レッグドライブ」の技術を駆使する。正確で緻密なフォームで自分の体重の2倍もの重さを「すっ」と下げて挙げるわずか数秒の芸術的な技に、谷口さんの工夫と努力、強い意志が詰まっていると感じた。 

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