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十勝毎日新聞

映画「おしゃべりな写真館」 藤嘉行監督インタビュー

 映画「おしゃべりな写真館」でメガホンを握った藤嘉行監督に映画への思いなどについて聞いた。

自身が感動した鹿追町民との触れ合い、美しい風景など実体験を「映画に詰め込んだ」と話す藤監督

「じゃ、撮ろうか」が始まり 実体験と感動 作品に込め

 -映画の舞台に鹿追や十勝を選んだ理由は。
 2019年2月に鹿追で「明日へ-戦争は罪悪である-」(17年、藤監督)の上映会を開いた。2月の十勝の風景を初めて見て、あまりにも広大だった。しかりべつ湖コタンも開催中で、中原(丈雄)さんも一緒だった。ここで映画が撮れたらいいねという話をし、地元の人からも撮ってほしいと話があった。お酒ののりで『じゃ、撮ろうか』ということから始まった。

 -カメラを通した鹿追の風景は。
 (鹿追町瓜幕に滞在中に)新聞配達を手伝っている時、雪原の中で朝日が昇る直前に空がピンク色に染まり、その後オレンジ色の朝日が昇ってきた。思わず車を止めてカメラで撮ったら、「そんなもん撮るの?」と、鹿追の皆に言われた。そういう感動がこの映画の中に全部投影されている。春、夏、秋、冬と思う存分撮影して、素晴らしい風景が撮れた。

 -そういう感動を映画の中に込めたのか。
 自分の実体験がかなり台本に入っている。感動を人に伝えたいという思いがあった。出来上がった映画を見た鹿追の人が「こんなにきれいなんだね、うちの所は」って言うぐらい、普通に生活している人は気付いていない。感動を映画の中に入れたいという思いが強くあった。

 -撮影では町民の協力も大きかった。
 長期間、無償で貸してくれた建設業者の倉庫に屋内セットを建て、一番こだわって探していた草原の中に一本の木が立つ場所も、所有者が無償で貸してくれてオープンセットを建てられた。支え隊という町民グループが炊き出しをしてくれた。ほかの撮影では冷たいお弁当を食べることも多いが、炊き出しで温かいそばをつくってくれたり、おにぎりを握ってもらったり。それだけでスタッフ皆が喜んで仕事ができる。形には見えないがその協力があって映画ができた。スタッフの宿泊など町の協力も大きかった。

 -今後、鹿追や十勝を舞台にした映画の構想は。
 十勝の開拓時代に興味がある。道もないところに川で上がって来て、広大な森を農地に変えた。そういうのを描いてみたい。乃南アサさんが書いた「チーム・オベリベリ」(講談社)を読んだ。依田勉三は偉人だと思っていたが、移民を連れてきて自分のやりたいことをやったが、大体は成功していない。偉人ではなく、非常に人間ぽいところに興味が湧いた。映像にするのは大変だと思うが、学校で見るような記録という意味も込めて撮れたらいいと思っている。

 -今回の映画制作は資金が潤沢とまでは言えなかったと思うが。
 今の世の中や映画は、暴力的だったり乱暴だったりするのが多いと感じる。そういうものじゃない映画を自分がつくりたいと思った。それはなかなか企画として大きい会社では通らない、営業的に。

 -最後に十勝の人たちに映画のPRを。
 十勝を舞台に1年かけて撮影した静かな人間ドラマになっている。ぜひ映画館に足を運んでほしい。

<ふじ・よしゆき>
 1958年大分県別府市生まれ。2019年に鹿追を初めて訪れ、この年の秋に鹿追町瓜幕のトレーラーハウスで長期滞在した。自宅は埼玉県内だが、鹿追町内にも家を借りて本州と鹿追を行き来する。町出身のプロデューサー須永裕之さん(65)=神奈川県=と、町内に映画制作会社「和ら美(わらび)」(代表取締役・藤監督)を設立。おしゃべりな写真館は同社の初作品。

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